こんな話がございます。 ある山奥の貧しい村に。 竹林に囲まれたぼろ屋がございまして。 老婆と孫娘が二人で暮らしておりましたが。 夜空に月が白く冴えた。 ある秋のことでございます。 高く伸びた竹がゆらゆら揺れる。 竹の葉がさらさら音を立てる。 風がかたかた板戸を鳴らす。 「おばば。寒くて眠られない」 「よしよし。おばばの布団へおいで」 おばばは齢六十で。 孫娘の志乃は十六で。 おばばには倅が三人おりましたが。 この数年で次々と亡くなってしまい。 残されたのはこの志乃ひとりでございます。 ほかに身寄りのないおばばは。 志乃を心底可愛がっておりました。 トハいえ、まだまだ子供と思っておりましても。 世間では十六といえばもはや年頃でございます。 現に、ひとつ夜着の中で身を寄せ合っておりましても。 志乃の体つきが小娘から娘に変わりつつあるのがよく分かる。 「志乃にもそろそろ婿を探してやらねばならんの