こんな話がございます。 平安の昔の話でございます。 陸奥国の介(すけ。次官)を務める者がございまして。 通称を大夫の介と呼ばれておりましたが。 この者は年を取ってから後妻を娶りました。 十五の娘を連れ子にした、いわく有りげな女でございます。 古今東西、地位ある年寄りに擦り寄る女に、 ろくな者がいたためしはございませんナ。 この者の後妻もまた、ご多分に漏れませんでして。 ハナから目的は金、金、金でございます。 常日頃から気弱そうな家来を物で釣って手懐けている。 そうして、ひたすらに時機を待っているのでございました。 ある時、大夫の介が長らく屋敷を留守にすることになった。 後妻はさっそく、この石麿ト申す家来を呼び寄せまして。 「お前のために前々から良い子がいないものか探していたのだが、とうとう見つけたよ。お前さえ気に入れば、今夜夫婦にさせてやるつもりだが、どうだえ」 ふと見やるト、その陰でもじ