怖い話と志怪に関するonboumaruのブックマーク (29)

  • 怪異に精気を抜かれる宿 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 唐土(もろこし)の漢の時代の話でございます。 かの国の汝南郡は汝陽なる地に。 西門亭ト申す旅舎がございましたが。 この宿はある不名誉な噂で、人々によく知られておりました。 それは、夜に二階に泊まる者があるト。 必ず怪異があるトいうことでして。 何者か、いや、呪いか祟りか、ともかく何らかの気が現れまして。 旅客の精気を、白髪になるまで抜き取ってしまう。 その噂が遠く都まで届いているほどでございました。 さて、ここに鄭奇と申す豪胆な男がございまして。 この者は汝南郡の役人でございますが。 こちらは神をも恐れぬことで、人々からよく知られておりました。 ある時、鄭奇は所用で汝陽へ向かいましたが。 あと数里ほどというところで、日が暮れてまいりました。 ト、そこへ、 「あの、お役人様でございますか」 暗がりから突然声を掛けてきた者がある。 見れば若い女で、不安げな様子でこちらを

    怪異に精気を抜かれる宿 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2016/07/12
    「捜神記」より
  • 黒い腹の中 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 唐の国の話でございます。 陽羨という地に許彦(きょげん)と申す者がおりました。 七十の坂を過ぎておりますが、生涯独り身でございます。 独り身と申しますのは、がいないという意味ばかりではない。 女の肌に触れることのないまま、いつしか老境を迎えたのでございました。 女嫌いだったわけではございません。 縁がなかったわけでもございません。 自分でもどうしてこうなったのだろうト、許彦はよく考えますが。 考えれば考えるほど、原因は己の側にあるとしか思えない。 ――女嫌いではない、女が怖かったのだ。 女が恐怖を秘めているから怖いのではなく。 己が、女に接する勇気をなかなか持てないままに。 わしは今日まで老いてしまったのだ。 今さら、そんな結論に至ったところで、老爺に出来ることはもうございませんが。 許彦は、考えても仕方のないことを毎日考えながら、山道を登り降りするのでございます

    黒い腹の中 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2016/07/07
    六朝期の志怪小説「続斉諧記」より。井原西鶴「西鶴諸国ばなし」『残るものとて金の鍋』の原拠。
  • 夜ごとの妻 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 唐の国の話でございます。 よく、「ここだけの話だ」ナドと言って、つまらない話を持ってくる人がおりますが。 そういう者に限って、あちこちで「ここだけ」ト言って回っている。 一体、この者の「ここ」はどこまで広いのかト、不思議に思うことがございますが。 秘密はやはり、己の胸に秘めておきたいものでございますナ。 唐の元和年間のこと。 王勝(おうしょう)と蓋夷(がいい)という者がおりまして。 この二人が科挙の試験を受けた時のことでございます。 時節柄、どこも宿は満員で、二人は泊まる場所がない。 あちこち探し求めて、ようやく郡の書史の家で間借りをすることになった。 間もなく、他の部屋も間借り客で埋まり始めましたが。 向かい側にある建物だけは、何故か細い縄で門が塞がれている。 気になって、窓からその建物の一室を覗いて見ますト。 一人用の寝台に粗末な布団、それから枕元にぼろぼろの籠

    夜ごとの妻 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2016/07/01
    唐代の伝奇小説「続玄怪録」より
  • 貧者と菊の姉弟 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 清国の話でございます。 世の中には極端な人間がございまして。 金に生き、金に埋もれて死んでいくような守銭奴があるかと思いますト。 その反対に、清貧の暮らしに並々ならぬこだわりを持つ者もある。 ここに馬子才と申す人物がございまして。 この者は人並み外れた菊好きでございます。 菊の花を愛でるがあまり、数十年来、清貧の暮らしを守り続けているトいう変わり者で。 どういうことかト申しますト。 子才が菊の花の魅力に取り憑かれているのは、その高貴さゆえでございます。 菊の花の美しさをうっとりと眺めるにつけ、世俗の出来事が穢らわしく思えてくる。 先祖伝来の広い土地に、小さなあばら家が遺されておりましたが。 子才はそこに籠もって、ひっそりと暮らしておりました。 それが、こと菊の花となりますト、これは一種の物狂いでございます。 どこそこにどんな品種のものがある、ナドと耳にいたしますト、

    貧者と菊の姉弟 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2016/06/26
    「聊斎志異」より。太宰治「清貧譚」の原拠。
  • 犬の墓 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 唐の国の話でございます。 御存知の通り、かの国の歴史は夏(か)王朝から始まりますが。 この「夏」という字はどういう意味かと申しますト。 おおよそ、「盛んである」とか「中心」というような意味だそうでございます。 後に、「華」の字がこれに取って代わるわけでございますが。 ところで、「中心」があるからには「周縁」もあるわけでございまして。 かの国では、それら周縁のまつろわぬ民を、東夷西戎南蛮北狄ナドと申します。 我が日のは東夷(とうい)でございますナ。 三国志中の魏志に東夷伝という項があり、さらにその一条として倭人伝がございます。 もっとも、我々は自分がエビスだなどとは思っておりませんが。 このまつろわぬ民の中でも、殊に強大であったのが、西戎(せいじゅう)、北狄(ほくてき)で。 大群で馬を駆っては高原を自在に闊歩し、時にはこの「夏」「華」の領域を侵すほどでございました。

    犬の墓 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2016/06/20
    唐代の伝奇小説「宣室志」
  • 女侠と乳飲み子 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 唐土(もろこし)の話でございます。 唐の貞元年間と申しますから、我が日ので言うならば、平安の都が開かれたばかりの頃でございましょう。 崔慎思と申す者が、科挙に合格し、晴れて進士となりました。 この進士と申すのは、六科ある科挙の中でも最難関でございます。 よく、七十を過ぎてようやく合格した、などという逸話がございますが。 たいていは四十歳前後で合格するのが普通だったようでございます。 この崔慎思もご多分に漏れませんで、もう四十に手が届かんといった年格好でございます。 これまで勉強詰めで暮らしてまいりましたのが、ようやく報われましたので。 栄誉に思う一方、羽根を伸ばしたい気持ちも何処かにございます。 あれやこれや、見てみたいもの、やってみたいことが、たくさんある。 ところが、崔は田舎の人でございます。 都に知人も親類もなければ、住む家すらない。 まずは身の置き所から探

    女侠と乳飲み子 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2016/06/14
    唐代の伝奇小説「原化記」より
  • 笑う女 嬰寧 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 清国の話でございます。 王子服と申す、将来を嘱望された若者がございました。 父はなく、母一人子一人という家で、溺愛されて暮らしております。 が、優秀な息子なだけに、母もそろそろ嫁を探してやらねばならない。 ある年の元宵節――我が国で言う小正月ですナ。 子服は母方の従兄である呉と申す男に誘われまして。 村はずれまで色とりどりの灯籠を見物しに出かけました。 若い男女が大勢出てまいりましたその中に――。 はっとするような美しい娘が一人おりました。 下女を一人伴って、梅の枝を手にもてあそびながら歩いております。 顔いっぱいにあどけない笑みを湛えている姿は、まさに天女のよう。 子服は思わず見とれてしまいまして、呆然と立ち尽くしておりましたが。 不意に聞こえてきましたのは、その娘の乾いた笑い声で。 「あ、あの人――。あんなにじっとこっちを見て――。ハハハハハ――、ハハハハハ――

    笑う女 嬰寧 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2016/06/08
    「聊斎志異」より
  • 群れなす呪い人形 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 唐の国の話でございます。 玄宗皇帝の治世のころ。 楚丘という地方の県令に、蘇丕(そひ)という人物がございました。 蘇丕には娘がおり、李という男に嫁いでおりましたが。 嫁に行った時にはすでに、夫と下女が怪しい仲になっておりまして。 そのため、夫婦とは名ばかり、また下女との間も上手くいかない。 下女の方では、自分の方が先にあるじの寵愛を受けていた、と考えておりますから。 むしろ、正の方を泥棒のように蔑み、憎んでおります。 とうとう怒りと妬みに耐えられなくなり、妖術士を呼び寄せた。 「あの女を懲らしめてやりたいのでございます」 「それでは、こうなさい」 ト、妖術士に施術をしてもらった後、指示に従い、まずは呪符を塵捨場に埋めました。 さらに、人間の膝丈ほどの人形を七体用意いたしまして。 一体、一体に晴れ着を着せる。 土塀の穴の空いたところに埋めると、上から泥で蓋をしまし

    群れなす呪い人形 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2016/06/03
    「広異記」より
  • 干将莫耶と眉間尺 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 唐土(もろこし)の春秋時代の話でございます。 楚の国に干将(かんしょう)と莫邪(ばくや)という夫婦がございました。 この二人は優れた刀匠でございまして、広くその名を知られておりました。 唐土も南の方へ行くと、山がちでございますから。 楚や呉、越などの地方では、良い鉄が採れるそうで。 自然、優れた刀匠もあまた輩出されたのだと申します。 さて、夫婦は楚王の命を受けて、剣を作っておりました。 五山の鉄精、六方の金英を集め、天地に伺いを立てながら鍛えておりましたが。 完成に三年もの月日を費やしたため、王の激しい怒りを買ってしまいました。 二人が作りましたのは、雌雄一対の剣でございまして。 苦労をともにしてやっと完成しましたので、名をそれぞれ「干将」「莫邪」とつけました。 その頃、の莫邪は子を身ごもっておりました。 いよいよ楚王に献上しに参殿しようという日、夫の干将がに申

    干将莫耶と眉間尺 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2016/05/27
    「捜神記」より