こんな話がございます。 あるところに夫婦がございました。 長年、子宝に恵まれず、寂しく思っておりますうちに。 女房もそれなりの年になり、もう諦めようということになりまして。 二人はあれこれ考えた末、何か動物を飼うことにいたしました。 ちょうどその折、畑に一匹の子猫が迷い込みました。 生まれたばかりらしく、目がまだ塞がっております。 ミャーミャーと乳を求めて鳴く声が不憫に思えまして。 夫婦は、この猫を我が子と思って育てることに決めました。 村は漁村から近い。 毎日漁師が魚と野菜を交換しにやってくる。 毎朝の食事は魚でございます。 猫を育てるにはもってこいの境涯で。 女房は自分の魚を毎日、半分ずつ分けてやる。 猫も喜んでそれを食べてどんどん大きくなる。 にゃーと鳴かれると可愛いですから、欲しがるものは何でもやる。 一年もした頃には、でっぷり太った大猫になった。 その年の秋の初めのこと。 村に六