こんな話がございます。 唐の国の話でございます。 我が日の本では、都が奈良にあった頃のことでございます。 金陵の地に、陳仲躬(ちん ちゅうきゅう)ト申す者がございました。 富裕な家庭に育ちまして、また生来の学問好きでございます。 千金の金を携え、洛陽へ遊学に行きました。 洛陽に着きますト、清化里という地に一人で住まい始めました。 この家には大きな井戸がございました。 以前から、人が落ちて溺れることが、よくあったそうでございますが。 仲躬は学問にのめり込むあまり、外へ出ることもございませんでしたので。 全くこのことを気にせずに過ごしておりました。 それから月日が流れまして。 ある時、隣家の十歳ばかりの女の子が、この井戸に落ちてしまいました。 毎日水を汲みに来ていた娘でございましたが。 ふとしたはずみで落下し、亡くなったとのことでございました。 井戸は深く、家内の者が総出で井戸浚いをいたしまし