2019年4月15日のブックマーク (1件)

  • 杏生と二人のお貞 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 越後国は新潟湊に、若い医者がおりまして。 名を長尾杏生(ながおきょうせい)ト申しましたが。 これが目鼻立ちの整った好男子でございます。 年は二十歳を過ぎたばかりながら。 洒落っ気もあれば、品性も良い。 女たちの注目を一身に集めておりました。 ある時、トある妓楼に呼ばれて参りますト。 芸者がひとり床に臥せっている。 名をお貞(てい)ト申しまして。 長らく気を患っているトいう。 「お医者さん」 「どうしました」 布団からだらりと飛び出した白い手を。 軽く掴んで脈をとっておりますト。 虚ろな眼差しをそむけたまま。 恥じらうように女がそっと言いました。 「私、もう長くないんでしょう」 「馬鹿を言いなさい。気くらいで死ぬ人はいませんよ」 女は年の頃、二十二、三。 結い髪はとうに崩れており。 後れ毛が鬢から力なく垂れている。 病身の隠微な美しさ。 「それでも、他のお医者さん

    杏生と二人のお貞 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
    onboumaru
    onboumaru 2019/04/15
    「夜窓鬼談」より