筆者は、好んで欧州のドイツとギリシャやスペインなどの周辺国の関係を、「アリとキリギリス」の寓話にたとえてきた。倹約家で国際競争力を高めるために必死に働くドイツ=「アリ」と、浪費家で陽気に目先の享楽に興じる周辺国=「キリギリス」という構図である。両者の関係をもう少し詳しく説明すると、次のような話になる。 通貨統合でバブルに踊った周辺国=「キリギリス」 通貨統合後、周辺国の資金調達コストは、大量の資本が流入することで大幅に低下し、所得も大きく伸びた。たとえば、ギリシャの10年国債利回りは、通貨統合参加前の11%台から参加後には4%台まで低下した。しかし、その半面でユーロ圏内での経常収支の不均衡もまた拡大した。 こうした不均衡の拡大の背景には、いくつかの理由がある。まず、通貨統合によって周辺国の債務が、ドイツによって保証されているとの暗黙の了解があった。周辺国の成長率がドイツよりも高く、それによ