木村一基九段(46)が豊島将之王位(29)=名人、棋聖=に挑戦する将棋の第60期王位戦7番勝負が3日、名古屋市で開幕する。「千駄ヶ谷の受け師」の異名を持ち、ファンから絶大な人気を誇るA級棋士。現在、将棋界の頂点を極めている3冠を相手に、7度目のタイトル挑戦で悲願成就、史上最年長の初タイトルを目指す。決戦前夜の思いを聞いた。 決戦を目前にした木村は自然体だった。気負いを感じさせず、真っすぐな視線で大舞台を見つめている。 「もう挑戦することはないだろうと思っていましたから。不思議な感覚です。出られるのは幸せなことですけど、楽しんで良いものじゃないですからね。苦しみ抜かなきゃいけないんじゃないかと思います。耐えられるのかな、という怖さもありますよ。挑戦者に向いている人間かは分からないので、勝ちます、なんて鼓舞することは言えないですよ」 タイトル初獲得の最年長記録は1973年2月、第21期棋聖戦で