ミクロネシアのある島では,ある種のチョウの90%以上がメスだ。実は皆,ボルバキアという細菌に感染している。この細菌に感染すると,オスの卵はみな死んでしまい,メスだけが生き残るので,個体のほとんどがメスになってしまうのだ。ボルバキアはこうした「オス殺し」だけでなく,性転換を起こすこともある。日本にもいるキチョウがこれに感染すると,染色体がオスでも卵巣が発達し,ほかのオスと交尾して子孫を残せるようになる。 1匹の虫の体の中には無数の微生物がすんでいる。虫と共生するそうした微生物たちは,見えないところで宿主の性質を司っている。微生物に感染することで,虫の食べるものから行動,体の色や性別まで変わってしまうことがあるのだ。 産業技術総合研究所の深津武馬さんは,そうした共生関係を研究している。共生する微生物の中には,宿主に必要な栄養を供給したり,外敵から身を守る毒を作ってやるものもあれば,逆に宿主を体
![細菌によって変わる虫たち](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/2e9608529800bec72f238c8a9e4ef493e411f4b7/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fwww.nikkei-science.com%2Fwp-content%2Fuploads%2F2010%2F05%2F201006_062.jpg)