【書評】『最重度の障害児たちが語りはじめるとき』中村尚樹著/草思社/2310円(税込)【評者】鈴木洋史(ノンフィクションライター) * * * 記された事実の数々に深い感銘を覚えると同時に、人間とは何かという根源的な問いを突きつけられるノンフィクションである。 遺伝性疾患や誕生前後に発症した脳性麻痺などにより、身体にも脳にも重い障害を負った人たちは、自分が言葉を喋れないばかりか、他人の言葉を理解できず、知的には乳幼児レベルと考えられてきた。 本書が最初に取り上げる八巻緩名(かんな)さんもその一人だ。ところが、2004年、9歳のとき、障害児教育の専門家である國學院大學教授・柴田保之氏の指導と介助により、生まれて初めて言葉によって自分の思いを表現した。平仮名の50音図から一文字ずつ選択する音声ガイド付きのワープロソフトと、身体のわずかな動きを利用して入力するスイッチを備えたパソコンをいじらせ