いつか誰かが「カメラのファインダーを通して見る世界は、人によって違うんだよ」と話していた。元・カメラ小僧の父親の言葉だったか、どこかの小説だかマンガだかの台詞だかは忘れてしまったけれど……でもまあ、割とよく耳にする表現だと思う。 実際、カメラ好きのカップルが一緒に街を歩くとして、2人が被写体にするのはそれぞれに違うもののはずだ。1人は街路樹や花々、あるいは頭上の青空に向かってカメラを構えるかもしれないし、もう1人は電柱やマンホール、はたまた道行く人々を写真に収めようとするかもしれない。 また、その人がいつも同じものを撮り続けるとも限らない。公園で草花を中心に撮っていた人がある日、急に夜の工場写真に魅了されるようなことだってある。さらに言えば、ファインダー越しの風景は、撮影者のその日の気分によっても変わってくるんじゃないかと思う。 そう、なんとなく街を歩きながらカメラを構えるのを楽しんでいた