川端康成が自身の翻訳観・日本語観を披歴した文章に「鳶の舞う西空」という随筆があって、精読したことがある。「『源氏物語』の作者に『紫式部日記』があった方がよいのか、なかった方がよいのか。なくてもよかった、むしろなければよかったと、私は思う時もある」という書き出しのこの随筆は、最初のほう「源氏物語」の英訳や日本古典の現代語訳について取り留めのない話をしているけれど、半ばあたりでおもむろに「川嶋至」という名前を出し、そこから先、この人への反論となる。どうやら翻訳の話は枕にすぎなくて、反論が本題であるようだ。川嶋至は知らない名前だったので、精読の一環として軽い気持ちで調べ始めたら、とまらなくなった。それで結局、国会図書館まで行くはめになった。もう十年くらい前の話になるけれども。 いま小谷野敦『川端康成伝 双面の人』を読んでいるのだが、読み始めてすぐ、この人の名前が出てきた。引用させてもらう。「川端
【織井優佳】川端康成(1899~1972)が昭和3(1928)年、29歳で書いたと見られる未発表小説「勤王の神」の自筆原稿が見つかった。川端研究の専門家で、原稿を所蔵する鶴見大学の片山倫太郎教授が確認した。読み物誌に書き送ったが没になったらしく、後のノーベル賞作家が若いころは苦労していた様子がしのばれる。 原稿は2010年に鶴見大学図書館が古書店から買った。400字詰め原稿用紙21枚にペン書き。筆跡が一致し、原稿用紙も昭和初期の数年間の既知作品と同じで、直筆に間違いないという。1枚目に受領印らしきものがあり、別の筆跡で「3年12月26日」などと記入されている。 作品は江戸後期に皇室中心の日本のあり方を説いた実在の神道家・井上正鉄の生涯を描く。片山教授によると、1926年に矢橋三子雄という人物が書いた偉人伝「誠忠美談 忍ぶ面影」の1章を元にして書かれている。元の本より会話体が増え、古めかしい
漫画家の赤松健さんは3月27日、文化庁が主催した「著作物の公開利用ルールの未来」に関するシンポジウムで、漫画の2次創作文化を守るための新ライセンスを、クリエイティブ・コモンズ(CC)に提案した。昨年にも同様な目的でライセンスを提案していたが、「コミケ準備会に突っ込まれた」そうで、新たに、コミケなど即売会当日に限定した新ライセンスを提案。「黙認」を意思表示するというユニークなものだ。 「クリエイティブ・コモンズを普及させるには、漫画ですよね」――赤松さんはそう切り出し、新マーク「CV」(connivance、黙認)を説明する。 「作者として、公式には2次創作は認められないが、従来までのような常識的な範囲内なら、同人誌即売会の当日だけ、無料で2次創作を黙認する」という意思を表示できるマーク。丸い円の中に黒色で人物マークが描かれ、その後ろにもグレーで人物が描かれている。前の人物が著作者で、後ろの
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