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ブックマーク / honz.jp (88)

  • 『辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦』スタンダードの求心力と辺境の遠心力 - HONZ

    読書会のやり方は人によって様々だと思うが、面白く実施するためにはいくつかの条件がある。たしかに同じような読書量のメンバーが集まり、をネタに好き勝手言い合うだけでも、それなりの楽しさはあるだろう。 しかしそれを継続的に習慣化していくためには、少なからず妄想のような会話にリアリティが伴ってくる必要がある。HONZの例で言えば、サイエンスの話に触れながら、ふと感じた疑問に答え合わせのできる状況が整えばグッと面白くなるのだ。だからHONZの朝会にわざわざ大阪からやってくる大学教授の存在には、得難いものがある。 また信じられないようなノンフィクションを前にそれに近しい体験をしたことのある人の話が加わった時にも、盛り上がりを見せることが多い。自分では想像するしかなかったことが、誰かの体験と地続きになることで、一気に自分ごと化するような感覚が味わえるのだ。 そういった意味で書に収められている読書

    『辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦』スタンダードの求心力と辺境の遠心力 - HONZ
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    oyoyom 2018/03/22
  • 『鳥! 驚異の知能 道具をつくり、心を読み、確率を理解する』 鳥を知れば人間の本質が見えてくる - HONZ

    21世紀の今、人類は世界のあらゆる場所にまで生息範囲を広げ、多くの生物を絶滅に追いやり、地球環境そのものを変えるほどの力を持つにいたった。どのような能力が、人類をこれほど繁栄させたのか。持続的な二足直立歩行も人類の特徴ではあるが、何よりその知能が私たちを特別な存在としたことは間違いない。意図的な核融合、宇宙への旅行、地球の裏側との瞬時のコミュニケーションを可能にするのは、人類の叡智だけだ。 あまりに多くのものを手にしたために、私たちはこの知能を人類にのみ与えられた特権だと勘違いしがちである。特に鳥は昔から愚かな生き物だと考えられてきたという。英語では落ち着きのない人を「鳥頭」(bird brain)と呼ぶ表現もある。確かに、ただ何気なく眺めているだけでは街にいるカラスやスズメから、知性を感じることは難しい。しかし、気の遠くなるようなフィールドワークによって得られた事実を裏付けとして、よりつ

    『鳥! 驚異の知能 道具をつくり、心を読み、確率を理解する』 鳥を知れば人間の本質が見えてくる - HONZ
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    oyoyom 2018/03/22
  • まるで上質なミステリィのようなノンフィクション──『死体は嘘をつかない 全米トップ検死医が語る死と真実』 - HONZ

    無念な話ではあるが、人は死ぬものだ。 そして人はいつだってわかりやすい状態で死ぬとは限らない。自殺、事故死、殺人──損傷した死体しか残らないこともあるし、我々は時折「その人がどのように死んだのか」を深く知る必要に迫られる。その瞬間を目撃していた人がいれば話は簡単だが、人間は時に嘘もつくし、何よりそこにいなければ証言できない。その代わりに、場所にはあらゆる行為の痕跡が残り、何より、殺人/自殺/事故の時には、もはや物は言わぬが、多くの事を伝える死体が残る。 書『死体は嘘をつかない 全米トップ検死医が語る死と真実』は、45年に渡って検死医として働き、数々の有名な犯罪事件の調査にも関わった著者が語る検死の物語。正直いって最初は「地味そうな話だなあ」と思っていたものの、読み始めてみれば意外や意外、取り上げられていく著者が関わった事件はどれもニュースを沸かせたような、話題性抜群のものばかりだし(話題

    まるで上質なミステリィのようなノンフィクション──『死体は嘘をつかない 全米トップ検死医が語る死と真実』 - HONZ
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    oyoyom 2018/02/14
  • オスはみーんな、二重人格?『歌う鳥のキモチ』小鳥のびっくり私生活 - HONZ

    「ことりはとってもうたがすき かあさんよぶのもうたでよぶ♪」 子どもの頃、大好きだった童謡。ただ……ふと思う。小鳥が歌うのって、「好き」だからなの? 早朝、森に降りそそぐ小鳥たちのコーラス。聴く側もさわやかで心地よいけれど、小さな体に似合わぬ大きな声で精いっぱい歌う姿を見ていると、やっぱり「歌が好き」なんじゃない?という気がしてくる。 でも「歌う」ことは、わざわざ天敵に自分の居場所を教えるようなもの。つまり彼らの歌は「命がけ」。「好き」だけでは説明できない理由があるはずだ。 ここで、ルビオに登場してもらおう。ルビオはオスのクロツグミという鳥で、書の著者が観察していた個体である。書は「小鳥にとって歌とはなにか」、著者自身の観察成果を中心に教えてくれる。そこから見えてくるのは、意外にも「人間くさい」小鳥たちの私生活。 で、そのルビオなのだが、 クロツグミは独身と既婚とでこんなにも歌い方が変

    オスはみーんな、二重人格?『歌う鳥のキモチ』小鳥のびっくり私生活 - HONZ
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    oyoyom 2017/12/16
  • 『息子が殺人犯になった コロンバイン高校銃乱射事件・加害生徒の母の告白』わかりやすい原因などない、という現実 - HONZ

    『息子が殺人犯になった コロンバイン高校銃乱射事件・加害生徒の母の告白』わかりやすい原因などない、という現実 コロンバイン高校銃乱射事件。1999年4月20日、コロンバイン高校の学生2人が無差別に発砲を行い最終的に自殺、教師1人と生徒12人が死亡し、24人が負傷した傷ましい出来事だ。発生から15年以上が経った今なお学校銃乱射事件の代名詞的存在とされるのは、犯人であるエリックとディランがそれぞれ卒業を間近に控えた、18歳・17歳の少年だったという若さだけが理由ではない。 2年以上をかけて準備されていた計画の周到さ。そして、何百人もの生徒たちでにぎわう昼時のカフェテリアを爆破するという残虐な構想。計算ミスや完成度の低さにより爆弾は不発に終わったものの、実際の被害を遥かに上回るその計画の大きさは、人々の間に驚きと恐怖の渦を巻き起こした。 言うまでもなく、この事件を題材にして過去に多くのが書かれ

    『息子が殺人犯になった コロンバイン高校銃乱射事件・加害生徒の母の告白』わかりやすい原因などない、という現実 - HONZ
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    oyoyom 2017/07/27
  • 『Mr.トルネード 藤田哲也 世界の空を救った男』嵐のような天才気象学者の生涯を追う - HONZ

    とにかく私の人生は面白い。安定とは無縁だった 気象学者、藤田・テッド(セオドア)・哲也は、自身の歩みを回顧して、そう語った。書は、彼の生涯をつぶさに書きとめた評伝であるが、この引用の言葉どおり、とんでもなく面白い。なにせ、気象学者ながら、ひじょうに多彩な顔を持ち、絶えず変化する気象現象のように数奇な道のりをたどってきたのだから。 最初に略歴を書いておこう。1920年、福岡県に生まれた藤田は、明治専門学校(現在の九州工業大学)を卒業後、助教授に就任。1953年に渡米し、以後シカゴ大学にて40年以上にわたり局地的な気象現象について研究を重ねる。その後、竜巻の強さを示す階級表「F(フジタ)スケール」の提唱や、飛行機の墜落事故を引き起こす積乱雲からの下降噴流(ダウンバースト)の研究といった業績により、気象学史にその名を残す。1998年に他界。 このように輝かしい経歴を持ち、さらにはフジタテツヤと

    『Mr.トルネード 藤田哲也 世界の空を救った男』嵐のような天才気象学者の生涯を追う - HONZ
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    oyoyom 2017/06/30
  • 二次元世界の住人から、三次元はどう見える?──『フラットランド たくさんの次元のものがたり』 - HONZ

    作者:エドウィン.アボット・アボット 翻訳:竹内 薫 出版社:講談社 発売日:2017-05-12 フラットランド。そこは二次元の世界。立体が存在しない、いわば紙の上の世界だ。 そんな世界にも住人は存在する。まず女性は直線で、兵士や下層階級の労働者は二辺の長さが等しい三角形。中産階級は正三角形と、それぞれ形で身分が決定されている──そんな特殊な世界を描きながら、自身の今いる次元の世界から、一つ上、あるいは下の世界がどのように見えるのかを物語として描き出したのが、書『フラットランド たくさんの次元のものがたり』だ。 原書が出版されたのは1884年のイギリスである。当時は評価されなかったというが、「二次元世界の住人」という架空の視点を導入することで次元の質をついた内容が、アインシュタインの相対性理論発表以後、再評価された。書はその日語新訳版である。百年以上前のじゃん! と思うかもしれ

    二次元世界の住人から、三次元はどう見える?──『フラットランド たくさんの次元のものがたり』 - HONZ
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    oyoyom 2017/06/24
  • HONZメンバー推薦! 人生で一番影響を受けた本 - HONZ

    春の合宿を行った際、今までで一番影響を受けたを紹介せよ!という命令が成毛眞より下った。下は大学生から上は還暦オーバー組まで、「が好き」なのは変わらないが、幼いころから好きだった人、大人になって目覚めた人など、ひとそれぞれ。 ♬育ってきた環境が違うから~♪というわけで、かなり個性的で興味深いラインナップになった。絶版も多いけど、今の時代、図書館や古屋さんでだいたい見つかります。新生活での読書ガイドとしてご利用ください。 ◆成毛眞

    HONZメンバー推薦! 人生で一番影響を受けた本 - HONZ
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    oyoyom 2017/04/06
  • 『失われた宗教を生きる人々 中東の秘教を求めて』 - HONZ

    ある考古学者がイラク南部で、四千年以上昔の木のパネルを発見した。美しい彫刻が施されていたが、蝶の羽のようにもろくなっていた。見つめていると雨が降りはじめ、写真を撮る間もなくパネルは溶けて泥と化した。中東の多様な宗教と民族のモザイク模様は長く輝かしい歴史の記念碑とも言うべきものだが、現在崩壊に向かっている。中東に恋をした元外交官の著者は、その姿を書き留めておこうと旅に出た。 書には7つの秘教が取り上げられている。アダムの息子セトの家系を自任するマンダ教徒は、二元論(光と闇)を基にチグリス川で洗礼を行いイラク南部の沼沢地帯で1800年以上生き抜いてきたが、イラク南部が戦場となった湾岸戦争やイラク戦争で大きな打撃を受けた。イラン系多神教の末裔で輪廻転生を信じ、火と孔雀天使(マラク・ターウース)を崇拝するイラク北部のヤズィード教徒は、ISISの迫害の的となった。なお、握手の慣習は古代イランのミト

    『失われた宗教を生きる人々 中東の秘教を求めて』 - HONZ
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    oyoyom 2017/03/15
  • 『三省堂国語辞典のひみつ 辞書を編む現場から』三省堂国語辞典の行間 - HONZ

    を読んで気になることのひとつに、その著者がどんなパーソナリティの人なのか、ということがあると思います。 飯間浩明先生は、テレビやラジオに出演されることも多いので、すでにご存じの方も多いかもしれませんが、ここでは私から見た飯間先生について述べたいと思います。 私は趣味で国語辞典を収集していることから、飯間浩明先生とは、国語辞典を扱ったテレビ番組やイベントを通じて何度かご一緒したことがあります。また、早稲田大学第一文学部の先輩でもあり、大学院にも共通の知人が何人かいるという、比較的近しい場所にいらっしゃる方でもあります。 文章から受ける印象としては、どんな用例でも出典を明らかにしたり、証拠と根拠を示して主張したり、さらにそれらのことをわかりやすく丁寧な表現で伝えることを心がけていらしたりと、学者らしさ、誠実さ、真面目さが伝わってきます。一方で、反論を恐れる学者が使いがちな、「かもしれない」「

    『三省堂国語辞典のひみつ 辞書を編む現場から』三省堂国語辞典の行間 - HONZ
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    oyoyom 2017/01/30
  • 『あなたの人生の意味 先人に学ぶ「惜しまれる生き方」 』 - HONZ

    夏目漱石に「私の個人主義」という作品がある。これは小説ではなく、大正3年(1914年)11月25日、学習院で行なわれた講演の記録である。代表作というわけでもなく、日頃あまり脚光を浴びることもないが、私は日人全員が読むべき作品と思っている。少なくとも中学か高校の国語の教科書には載せるべきだ。『こころ』よりは絶対に教科書にふさわしい。個人主義というとすぐ、「自分勝手」と同義 に解釈し、「現代は行き過ぎた個人主義の弊害が」などと言う人が多い。しかし、漱石の言葉を読めば、 個人主義は決して自分勝手ではないし、今も決して行き過ぎてなどいないことがよくわかる。 まず漱石は 「自己の個性の発展を仕遂げようと思うならば、同時に他人の個性も尊重しなければならない」と言っている。個人主義とは、「自分という個人」の自由と権利が広く認められることではあるが、それは同時に誰もが、「他人という個人」の自由と権利も広

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    oyoyom 2017/01/23
  • むっちゃいけてまっせぇ~ 『マンガ 超ひも理論をパパに習ってみた 天才物理学者・浪速阪教授の70分講義』 - HONZ

    むっちゃいけてまっせぇ~ 『マンガ 超ひも理論をパパに習ってみた 天才物理学者・浪速阪教授の70分講義』 -そして「実録! 大阪大学出版委員会」- 超ひも理論である。HONZ代表の成毛眞とともに挑んだが、まったく歯が立たなかった難攻不落の理論である。まぁ、ひょっとしたら、挑んだ相手というか、説明してくれた人が悪かったのかもしれない。我々を十分に納得させてくれんかったのだから。その敗北記は、東洋経済オンラインの『天才物理学者・浪速阪教授に聞く、その1、その2』に詳しい。 その浪速阪教授こそ、小説『超ひも理論をパパに習ってみた 天才物理学者・浪速阪教授の70分講義』(略称『ひもパパ』)の原作者である橋幸士・大阪大学理学研究科教授なのだ。実際には、小説『ひもパパ』がおもろいからというので話を聞きに行って、予想通り玉砕したのである。ちなみに、読んでも超ひも理論のことようわからへんのに、小説『ひも

    むっちゃいけてまっせぇ~ 『マンガ 超ひも理論をパパに習ってみた 天才物理学者・浪速阪教授の70分講義』 - HONZ
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    oyoyom 2016/12/26
  • 『進化の教科書 第1巻 進化の歴史』 進化入門の決定版 - HONZ

    ハーバード大学やプリンストン大学をはじめ、全米200以上の大学で採用さている教科書『Evolution: Making Sense of Life』の邦訳3分冊の第1巻である。「教科書」といっても、書は議論の余地のない事実が淡々と積み上げられた退屈なものではない。原著者は『ウイルス・プラネット』等で知られる大人気サイエンスライターのカール・ジンマーと『動物たちの武器』のモンタナ大学教授ダグラス・J・エムレンであることからも分かるように、科学読み物としての楽しさを保ちながら、確かな知識を与えてくれる内容となっているのだ。またAmazon.comでは『Evolution』の価格は12,000円以上と高価だが、この第1巻はフルカラーの図を多く含みながら、1,680円(税別)だというのだから買うしかない。さらに、邦訳者の1人には、『化石の生物学者』の著者であり『ネアンデルタール人は私たちと交配し

    『進化の教科書 第1巻 進化の歴史』 進化入門の決定版 - HONZ
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    oyoyom 2016/12/13
  • 『ニワトリ 人類を変えた大いなる鳥』 - HONZ

    ニワトリ無くして、人類無し! もし世界からニワトリが消えたなら? きっと各地でパニックが起きるに違いない。鶏肉は牛肉・豚肉などと比べて国際的な生産・消費量が急増しており、とりわけ新興国・途上国での需要がぐんと伸びている。安価で栄養価の高い肉や卵は、多くの庶民の健康を陰で支えてきた。 その膨大な加工品も含めて、人類にとってますます不可欠な材となり、成長する巨大都市のエネルギー源にもなっている。 もし私たちが他の惑星へ移住する時がきたならば、最も重要なタンパク源としてニワトリをまず同行させるだろう。実際、NASAはニワトリが惑星間旅行に耐えられるかどうかの実験をしており、可能と結論づけている。 材だけではない。インフルエンザの世界的流行をい止めるのにも、ニワトリは重要な役割を担っている。インフルエンザワクチンを作る入れ物として、卵が使われているのだ。 「宇宙船よりも複雑な構造」を持つ卵

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    oyoyom 2016/11/17
  • 『世界をつくった6つの革命の物語 新・人類進化史』 グーテンベルクがインターネットの生みの親? - HONZ

    体重わずか数グラムのハチドリは、ほとんどの鳥が真似することも困難なホバリングをすることができる。空中の定位置に留まるためには、羽を打ち上げるときも打ち下げるときも揚力を発生さるような、回転可能な羽を進化させる必要がある。ハチドリがこの独特なデザインの羽を持つようになったのは、花蜜を吸うためであると考えられる。ホバリングは、花蜜を取り出すために威力を発揮し、ハチドリの小さな身体に十分な栄養をもたらすのだ。 ハチドリの羽の進化を促した花蜜は、顕花植物と昆虫の共進化の産物である。花は花粉を昆虫に運んでもらうために色やにおいを進化させ、昆虫は花からより多くの花粉を取り出して他の花に受粉させるような装備を進化させた。この植物と昆虫の共進化の果てに、高密度なエネルギーをもつ花蜜が生まれ、その花蜜を栄養源とするハチドリへと至ったのだ。 著者は、このようなイノベーションの連鎖を「ハチドリ効果」と呼ぶ。これ

    『世界をつくった6つの革命の物語 新・人類進化史』 グーテンベルクがインターネットの生みの親? - HONZ
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    oyoyom 2016/08/22
  • 『「イスラム国」の内部へ 悪夢の10日間』ISとは何者なのか? - HONZ

    イラクとシリアに跨るISの支配地域の内情がどの様なものであるのかは多くの謎に包まれている。メディアなどで語られる情報は反IS側の陣営によるプロパガンダ的な要素を含んだ物が多く、その内容のどこまでが真実であるのか釈然としない点も多い。IS側もこれまでジャーナリストを支配地域に入れる事を拒んできた。多くのジャーナリストがIS の戦闘員に拘束され殺されている。書はそんな状況の中で西側陣営のジャーナリストとして初めてISの指導者であるバクダーディーから正式に許可を得てIS支配地域を取材にしたドイツ人ジャーナリスト、トーデンヘーファーのルポタージュだ。 ジャーナリストとしての著者の立ち位置は明確だ。事が起こった際には、批判的精神を持ちつつ当事者双方の意見に耳を傾けるというものだ。当たり前なように聞こえるがこれは当に難しい事だろう。日の事を例にとって考えればわかるだろう。中国北朝鮮などの国々と

    『「イスラム国」の内部へ 悪夢の10日間』ISとは何者なのか? - HONZ
  • 『自画像の思想史』 - HONZ

    人類の絵画史は15,000年前のラスコーの壁画から始まると著者は述べる。これに対して自画像の歴史はわずか5~600年。なぜ、かくも長い間人類は自画像に関心を持たなかったのか。ここから探求が始まる。 まず、古代の「自画像以前の時代」。自己と他者(世界)は調和しており、人間は神(世界)に従順であった。人間の顔は普遍的に表現され(イコン、仮面など)、自画像を描く必然性が見つけられなかった。 12世紀頃から画家のサイン代わりの自画像が現れる。ルネサンスから始まる近代は、自己と他者が対等の存在となり、かつ対立する時代であった。鏡が普及し遠近法が用いられて格的な「自画像の時代」が到来する。自己とは何かを追及する上で自画像を描くことが不可避となったのだ。最後に、現代は、自己と他者が分裂・拡散し、自画像を描く意味が喪われた「自画像以降の時代」である。 著者はヨーロッパに見る自画像の展開について、顔の造形

    『自画像の思想史』 - HONZ
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    oyoyom 2016/07/31
  • 『数学者たちの楽園 「ザ・シンプソンズ」を作った天才たち』著者サイモン・シン インタビュー 数十年来の陰謀を暴く - HONZ

    前作『代替医療解剖』の発表から実に8年。人気サイエンスライター、サイモン・シンの最新作の翻訳版がついに完成しました。テーマはズバリ『ザ・シンプソンズ』。1989年の初放映からすでに600話超! 今も続くアメリカの大人気アニメーションです。黄色い肌に、大きなギョロ目、極端にデフォルメされた姿はきっと多くの人がご覧になっているはず。社会風刺のたっぷりきいたドタバタアニメは時に社会問題にからんで日でも話題に上ります。 でも今回の切り口は、風刺でもなければアニメ論でもありません。『ザ・シンプソンズ』、実は超難解「数学コメディー」だった!! というサイモン・シンならではのものです。この背景にはハーバード大などで数学の博士号を取得した「天才」たちが、研究職をなげうってまで『ザ・シンプソンズ』の脚家になったという、驚くべき事実があるのですが、なぜ、そんなことが起こってしまったのか、そもそもどんな理由

    『数学者たちの楽園 「ザ・シンプソンズ」を作った天才たち』著者サイモン・シン インタビュー 数十年来の陰謀を暴く - HONZ
  • 『「病は気から」を科学する』心に治癒力はあるのか? - HONZ

    右にせよ、左にせよ、極端に意見が偏っている人ほど声がでかい。おそらく正解はその中間のどこかにあるはずだが、そこに位置するマジョリティ達は、自ら多くを語ろうとはしない。いずれにしても、両極のどちらが正しいのかという観点からは、何も生まれぬままに終わるケースが多いだろう。 近代以降の歴史を振り返ると、この手の問題はあらゆる領域に蔓延していた様子が見てとれる。そして医療の分野も、ご多分にもれずであった。合理的で還元主義的な、西洋医学の擁護者たちと、物質より非物質的なものを優先する代替医療や東洋医学の信奉者たち。言い換えれば、これらの対立は身体と心の代理戦争のようなものであったのかもしれない。 「代替」というネーミングからも推察される通り、長らく優勢を占めてきたのは西洋医学の方だ。しかし今、その歴史に変化の兆しが現れつつある。プラセボ効果における研究の進展をはじめ、医療における「心」の役割が解明さ

    『「病は気から」を科学する』心に治癒力はあるのか? - HONZ
  • 読書の醍醐味ここにあり 『奇妙な孤島の物語:私が行ったことのない、生涯行くこともないだろう50の島』 - HONZ

    何でもいいからを読みたい、意味なく読書を楽しんでみたいという人には格好のだ。なんの目的がなくとも、ほとんど意味がなくても、を読むということをこんなに楽しめるというのは、読書における醍醐味といっていいはずだ。 タイトルのとおり、50の孤島が紹介されている。『ドイツのもっとも美しい』に選ばれただけあって、とても綺麗なである。しかし、その印刷と造りは極めてシンプルだ。一つの島が見開きで紹介されていて、左側がマリンブルーの海に浮かんだ島の地図。地図の縮尺はすべて同じで、ページの縦横がおおよそ39kmと27kmになっている。 まず、そのひとつを見ていただきたい。この地図をひと目見てどこかわかる人は相当な地理フリークか歴史フリークだろう。答えはセントヘレナ島である。いうまでもなく、あのナポレオン・ボナパルトが流刑され終焉を迎えた島だ。 セントヘレナ島がどこにあるかをご存じだろうか。それを示す

    読書の醍醐味ここにあり 『奇妙な孤島の物語:私が行ったことのない、生涯行くこともないだろう50の島』 - HONZ
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    oyoyom 2016/04/17