はじめに:アストロバイオロジーの今日的意義 宇宙物理学(アストロフィジクス)や宇宙化学(コスモケミストリー)では、私たちが住むユニバースのどこでも同じ物理現象が起き、環境条件を整えれば同じ化学反応が起きるという前提に立って世界を理解します。一方の生物学は現在まで、地球生命というたった一つの対象について検証されてきた学問です。この生物学(バイオロジー)を宇宙(アストロ)のどこでも通用する知識体系に飛躍させて「宇宙における生命の普遍性や、地球生命の特殊性を理解する」ための学際的な探求こそが、「アストロバイオロジー」の今日的な意義だと言えます。 日本の宇宙科学でも、赤外線天文衛星や小惑星探査機など、アストロバイオロジー研究に間接的に貢献するプロジェクトは2000年代から実施されてきました。しかし、上記の課題解明を主目的に据えた計画は、国際宇宙ステーション(ISS)「きぼう」日本実験棟の船外実験プ