社員による発明の特許権、その帰属を発明した社員から企業に変える法改正が議論されている。組織を重視する日本の企業社会で、個性のある研究者の意欲をそがないか。慎重な検討が必要だ。 政府の成長戦略を受け、今年三月に特許庁の有識者会議で始まった議論がヤマ場を迎えている。そこへ飛び込んできたのが、中村修二さんのノーベル物理学賞受賞だ。職務発明の帰属や、社員が受け取るべき「相当の対価」の問題を広く世に知らしめたのが、青色発光ダイオード(LED)の特許をめぐる中村さんと、勤めていた日亜化学工業との訴訟だった。 職務発明は企業で職務として行われた発明をいう。特許法三五条では、職務発明で特許を受ける権利は社員に帰属し、この権利を企業が社員から承継するときには、社員は「相当の対価」を受けることができる。見直し案はこれを百八十度転換し、社員に配慮しながらも会社帰属にする。