ノンフィクションライター・高川武将が、将棋界の孤高の天才・羽生善治を7年にわたって取材した『超越の棋士 羽生善治との対話』を上梓した。 羽生への濃密なロングインタビュー「七番勝負」に加え、羽生と死闘を繰り広げて きたライバル棋士たちの物語を収録した大著。 「諦めることも大事。突き詰めちゃいけないんです」「将棋に闘争心はいらない、と思っています」「人並みに欲はあります……のんびりしたいとか」 40代後半になったいまも、藤井聡太ら若手強豪の挑戦を受け続け、10月11日開幕の 第31期竜王戦七番勝負で前人未踏のタイトル100期に挑む。そんな「超越の棋士」の 肉声は、なぜか聞く者に芯からの癒しを与える――。話題の本書の冒頭部分を、特別公開する。 寝癖髪の絶対王者 それは、羽生善治が永世七冠という大偉業を達成するおよそ2ヵ月半前の、平穏な一日のことだった──。 平日午前中の出発ロビーは、行き交う人も