バーチャルリアリティ(以下、VR)を題材とした作品の歴史は意外と古いが、日本で広く知られるようになったのは、高畑京一郎の『クリス・クロス 混沌の魔王』の登場によってであろう。第一回電撃ゲーム小説大賞の金賞受賞作だ。 高畑京一郎『クリス・クロス 混沌の魔王』(電撃文庫/KADOKAWA) 世界最大最速の電子頭脳「ギガント」を使った、256人が同時接続できるVRゲーム「ダンジョントライアル」が公開された。主人公のゲイルは、このVRゲームに参加したプレイヤーのひとりだ。最初は仮想現実のゲーム世界を楽しんでいたゲイルたちだが、ある人物の思惑により、予想外の事態に向かっていくことになるーーという設定は、現在ではありきたりなものだろう。しかし本書は、日本初のVRゲームを舞台にした、記念すべき小説だ。また、ストーリーも面白く、今でも読む価値がある。 出版当初、それなりに話題になった『クリス・クロス 混沌
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