客観的には私の人生は成功に類する物なのだろう。 人に恵まれ地位に恵まれ才に恵まれ、子宝にも恵まれた。 何一つ申し分のない人生だ。 だが、私自身、その成功に何ら価値を見い出せないのだ。 価値がないとは言い過ぎだろうか。 その成功を理由に自己を肯定することができないのだ。 満足感や安心感が得られないのだ。 友人達は自分の人生に満足しているように見える。 私は常に言い知れぬ不安を感じている。 不安を打ち消すように事業に打ち込んできた。 よき父、よき夫として生きてきた。 妻も娘達も私を誇ってくれている。 しかし当の私はそうではない。 人はこのような私を見て、謙虚な聖人と思うかもしれないが、違う。 私は人を見下している。 表には出さないが、いい年をして定職についていなかったり、年収が四百万を割るような男は塵だと感じる。 私と比べてなんと価値のない人間だろうか。 遭難などして罪に問われない状況ならば、
![或る中年の独白](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/b1638cdb5807a4788e4ba3c1109a984166e095fc/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fanond.hatelabo.jp%2Fimages%2Fog-image-1500.gif)