結局はこの話をしなければいけないのだと思う。欲望についてである。 東直子との共著『しびれる短歌』(ちくまプリマー新書、2019年1月)の中で、穂村弘はみずからが短歌を始めたバブル期を回想しながら次のように言う。 短歌の世界に限定して言うと、俵さんとか加藤治郎とか僕がバラバラでありながら共通しているのは、欲望に対して肯定的だっていうこと。それが口語短歌と結びついていたから、初期に口語で出た歌人はみんなそうだと思われて、そんなにてらいなくていいのかお前らっていう、その違和感ですごく叩かれた。単に口語が異質だったっていうだけじゃなくて、その背後にあった欲望の肯定が受け入れられなかったんだと思う。 (『しびれる短歌』第六章「豊かさと貧しさと屈折と、お金の歌」p.157) 80年代に登場した、いわゆるライト・ヴァースからニューウェーブに至る一連の作者たちの「ハイテンション」さについて、永井祐や斉藤斎