盲点を突かれた。料理の本は星の数ほどあれど、料理道具の専門書とは! 我々が当たり前のように生活の中で使用している料理道具の歴史を繙(ひもと)くことで、とんでもなくディープな人類の進化の歴史が見えてくる。 「生きる」ということと、「食」は同意語だ。しかし、ただ生肉を歯で食いちぎり、野草を引き抜き食するだけでは“口福(こうふく)”は得られない。火をおこし肉を焼き、それを切る。煮炊きする鍋、フライパン、米を炊く釜があり、ナイフ、フォークといったカトラリー、アジア人なら箸を使う。食をより豊かに、そして人をより幸せにする為(ため)に必要なのが“道具”である。そしてその道具達こそが、民族の文化をずっしりと担っているのだ。レシピ本ではないはずが読んでいる内に、気づけば聞いた事もない謎の料理、例えば古代ローマ、アピキウスの「すり潰し野菜」の作り方まで頭に入ってくる。作者の恐ろしいまでの知識と分析力が、生活
![『キッチンの歴史 料理道具が変えた人類の食文化』 ビー・ウィルソン著 評・安藤桃子(映画監督) : 書評 : 本よみうり堂 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/162377a23095ce3b18f49e5b03b666a5cc7578ce/height=288;version=1;width=512/http%3A%2F%2Fwww.yomiuri.co.jp%2Fphoto%2F20140317%2F20140317-OYT9I00515-N.jpg)