世界には、家庭生活をせず、生涯独身をつらぬくことを奨励する社会がある。 たとえば、チベットでは、最近まで、長男以外に男の子が生まれれば、出家させて、結婚できない一生独身の僧侶にすることが一般的だった。歴史的には男の子7人に1人が僧侶になったのだ。 だが、いかにして子孫を残すかということは、種の保存と進化を考える上で最大の関心事であるはずだ。それなのになぜ、あえて子供をつくらないという文化が形成されたのだろうか? ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの人類学者ルス・メイス教授らは、子供を出家させるチベット文化を調査し、『 Royal Society B』に論文を掲載した。 それによると、家父長的な社会では、ある男性が生涯独身をつらぬいた場合、それ以外の男性たちの競争が緩和されることと関係があるようだ。