ei perustu tositapahtumiin あれは、僕がとある鉄道系の百貨店に勤めはじめて三ヶ月くらい経ったころのことだ。研修もひととおり終えて、たまに鏡にうつる自分を見れば、ちょっとはデパート店員らしくもあり、それがなぜかすこし面映く感じはじめたころだ。 水曜日の朝のこと、上司に呼ばれて、フロア接客の実習をせよとの命を受けた。なんでも、系列が誇る接客の神様のような人が来るので、彼女から学んでこいとのことだった。接客の神様と聞き、何やらこの業界の秘密を覗き見ることができるような気になったりもした。それに、接客の神様はどんな人なのだろう? ……たんなるおばさん。そう、接客の神様は、たんなるおばさんだった。今もって、そうとしか表現できないくらいに、ふつうのおばさんだった。年の頃といえば五十代は半ばか、自分の母と比べてみても、上のようであり、下のようであり、ただ丸顔で人懐こそうな雰囲気