S高校の女子高生がふたり、はす向かいに立っている。通勤電車の混沌のなかで、その姿は一輪の秋桜のようにも思える。厚めの生地を採った夏服の半袖にはほんのわずかにブラジャーの薄桃色と水色が透けて並んでいる。スカートの長さは膝下丈と決まっているのか、それより上下は存在しない。化粧を知らない彼女らの牧歌の無表情は参考書に目を落としており、貧弱の睫毛がときおり、パサパサと音を立てるように瞬きをする。 車内湿度の高さが彼女らの涼やかな立ち居姿を鮮明にさせているようにも思える。彼女らは一様に両足のあいだに鞄を置き、左手で吊革を摑み、右手に参考書を取る。朝の陽光がUVカットガラスから僅かに差し込み、彼女らの素面の、肉の膨らみや微かの筋肉の動きを映している。幼さのむこうに、抜ける空の高さがある。もう秋である。そういう九月の初旬に、僕は物憂さを背負ったまま勤めに出る見えない自らの姿を、少し恥じるように彼女らか