携帯電話の文字列を見て、では会いましょうと私は書き送る。私はもうすぐ今日の仕事が終わるので、私と似たところのある若い後輩とちょっと飲もうと思います、いかがですか。少しの沈黙のあと思慮深い返信が返ってくる。いいですね。私は彼女のいる(そして私の出た)大学の最寄りの駅からすぐの、キャンパスとは逆の側にあるバーの名前を挙げた。彼女はその古く細長いビルディングを知っていた。 私は彼女を連れてカウンタから隔離されたように三つだけ置いてあるテーブルにおさまる。あたたかくて香りのいいお酒をふたつ作ってもらう。私たちは両手でそれを包んで飲む。カウンタに並ぶ人々の背中が頼り甲斐のある隔壁に見える。私たちはときどきそういうものを必要とするように思う。隔てられていること、薄暗いこと、あたたかいこと、両手の中になにかがあること、そこからいい匂いがすること。 ぜんぜん平気だと思ってたんですよと彼女は言う。卒論を乗り