SF作家・小松左京(1931~2011)の最初期の作品に「地には平和を」という中編があります(文庫版で50ページほどの長さで「短編」ともいえる。角川文庫『地には平和を』所収)。 太平洋戦争をテーマにした作品で、1960年(昭和35)に書かれたものです。 この作品の舞台は、1945年(昭和20)夏から秋にかけての日本。そこでは8月の終戦を迎えることなく、本土決戦(日本に上陸した米軍などとの戦い)が行われている。 そのような、実際とは異なる歴史を歩んだ「パラレルワールド」を描いた、SFの古典です。 *** そのパラレルワールドの日本では、予定されていた8月15日の玉音放送は中止となりました。そして、「事故」によって急死した鈴木貫太郎首相に代わって新たに首相となった阿南惟幾(あなみこれちか、鈴木内閣の陸軍大臣)による、本土決戦に向けた演説が放送されます。 これは、降伏を拒否して徹底抗戦を主張する