日本で育った私は、子供の時から「値上がり」を実感したことがなかった。去年までは、大好きな500円の1コインランチをあちこちで楽しめたし、洋服や靴が高くなったと感じることもなかった。 投資にもあまり熱心ではなかった。「バブル崩壊でこの家の価値が急落した」と幼い頃から聞かされていたため、市場の影響を受けない貯蓄のほうが安心だと信じ込んでいた。それで問題はなかった。
![日本で悲願のインフレ到来 なぜ悪夢に転じうるのか - BBCニュース](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/1d890ab3fe24100d8a56c33c23fdae6129799ee2/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fichef.bbci.co.uk%2Fnews%2F1024%2Fbranded_japanese%2F715F%2Fproduction%2F_125332092_japanshoppersgettyimages-1240453583.jpg)
マーガレット・アトウッド作の近未来ディストピア小説「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」では、侍女のオブフレッドが次々と悲惨な目に遭う。ほとんどの読者は彼女の境遇に、戦慄(せんりつ)しながら共感する。牛追いの棒でオブフレッドが殴られれば、彼女の痛みを自分のものとして感じるし、囚われの身のオブフレッドがあまりに不当に扱われる姿に感情移入して、体がこわばってしまう。
ジャーナリズムの歴史でも特に優れていると名高い雑誌記事の発表から、8月末で70年が過ぎた。記事の見出しはただひと言、「HIROSHIMA」。ジョン・ハーシー氏が書いた3万語にもなる記事は、核兵器による恐怖の全容を戦後の世の中に伝え、大きな衝撃をもたらした。BBCのRadio4編成責任者だったキャロライン・ラファエル氏が、その経緯を振り返る。 私の手元に、1946年8月31日発行の米誌ニューヨーカーがある。表紙のイラストは実に無難で、陽気で無邪気な夏の公園の風景が楽しく描かれている。背表紙ではニューヨークの球団、ジャイアンツとヤンキースの監督が、たばこは「チェスターフィールドで決まり」だと宣伝している。 ニューヨークのタウン情報と映画欄、ダイヤモンドや毛皮、車やクルーズのきらびやかな広告に続いて、編集部からの簡単なお知らせが載っている。そこには、この号全体をたったひとつの記事に充てると書かれ
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