辛い本だ。ヘイト・クライム/ヘイト・スピーチの吹き出す日本という悲惨な現実を前に、一番辛いのが被害を受ける人々であることは言うまでもない。加害側のコミュニティの一員でもあることは私にとってつらい事実だ。被害者の辛さと並べられる話ではないが。同じ意味で、悲しい本だ。 在日朝鮮人に対するヘイト・スピーチの被害者である著者は、現場で取材を重ねるうちに名前を特定されて個人に対するヘイトのターゲットにされた。二重のヘイト・スピーチを全身に受け、悩み、泣き、煩悶し、立ち上がることになった。苦悩の日々をつづった本書は、的確な日本社会論となっている。ヘイトとの闘いの日々を記録した本書は著者の叫びでありながら、呟きであり、時にジョークを交えた優しい微笑でさえある。笑えるが、同時に涙が出る。