誰かの「やめた」ことに焦点を当てるシリーズ企画「わたしがやめたこと」。今回はエッセイストの潮井エムコさんにご寄稿いただきました。 かつて街中で困っている人を見かけても、気恥ずかしさや「誰かが助けてくれるだろう」という気持ちから遠巻きに見ていることが多かったという潮井さん。 しかしある出来事を機に、今では自然と声をかけられるようになったそう。初めて勇気を出した日から今に至るまでの心の変化についてつづります。 「誰かが助けてあげたらいいのに」をやめた日 近所の商業施設で買い物を済ませ店を出ると、一人のおばあちゃんが漫画のような大荷物を抱えて歩いていた。いや、歩いているというよりは、進んでいるという表現の方が正しいのかもしれない。 曲がった腰から伸びる細い足を引きずるように前に出しながら、少しずつ進んでいる。その一歩は10cmにも満たない。 抱える荷物はパンパンのエコバッグが一つと、介護用オムツ