彼は手首を切って命を断った。 震災から半年後のことだった。彼は震災当日から一緒に医療支援をした仲間で信頼し合っていた若い医師だった。 朗らかなところしか見せなかった明るく笑顔の彼だったが、誰にも見せないが鬱傾向な一面もあり、メンタルを受診していたのは知っていた。でも、まさか、こんなことになるなんて。悩んだ。苦しんだ。こんな事になる前に、自分に何かできた事はなかったのか?って。前日まで一緒に仮設住宅を往診同行していたのに。もっと何か彼の発するサインに気付いてあげれなかった私が悪いのではないかと。まだ20代後半で若かった私は、自分を責めた。周りのスタッフはみんなで、かばい合いピアサポートし合った。でも、私は自分が死に飲み込まれていくのを感じていた。その後、私も何度も「死にたい」と感じるようになってしまった。電車がくる度に飛び込みたくなった。こんな気持ちは初めてだった。見かねた上司の医師に無理矢