小林太一さんが豚舎に入ると一斉に豚が集まってくる。「畜産には(出荷という)終わりがある。豚の命に向き合い限られた時間を大切にしたい」と話す=広島県福山市の日本畜産で2022年2月15日、藤井達也撮影 動物たちのストレスをできる限り少なくする「アニマルウェルフェア(AW)」という考え方がある。「動物は生まれてから死ぬまで、動物本来の行動をとることができ、幸せでなければならない」。欧州を中心に近年広がる概念だが、日本では理解が進んでおらず、2020年にはAWを警戒する畜産業者が絡んだ汚職事件まで発覚した。「動物の幸福」を目指すAWの現場を訪ね、考えた。【藤井達也】 「動物は幸せでなければならない」 AWは、動物に対し、①飢え・渇きからの自由②不快からの自由③痛み、負傷、病気からの自由④本来の行動が取れる自由⑤恐怖、抑圧からの自由--という「五つの自由」を保障することが基本で、1960年ごろに英