コロナ禍の下では様々な分野で臨時異例の対応を迫られたが、財政運営も例外ではない。2020年度の国の一般会計歳出は147.6兆円で、前年度の1.4倍を超える規模となった。22年度の当初予算は抑制基調で編成されたが、コロナ前の水準まで戻っていない。今国会に提出される第2次補正予算案が成立すれば、物価高への対応などで歳出総額は140兆円近くに膨らむ。23年度予算の編成に向け、防衛費の大幅増額の議論も
過日(6/2),経団連のシンクタンク21世紀政策研究所より政策提言報告書「中間層復活に向けた経済財政運営の大転換」がリリースされました. 特筆すべきは,同報告書が従来型の財政危機論・財政破綻論を批判し,積極財政を提言するものとなっている点です.緊縮傾向が強いといわれることの多かった経団連で積極財政に関する研究会が開催され,積極財政を提言する報告書がリリースされたことの意味は小さくないのではないかと考えます.論争の潮目は変わりつつあります. 【目次】 第1章 エグゼクティブ・サマリー(永濱利廣) 第2章 ネットの資金需要の不足と国債 60 年償還ルール(会田卓司) 第3章 財政破綻論への反論(永濱利廣) 第4章 新しい価値観に基づく投資の活性化(青木大樹) 第5章 好循環実現のための高圧経済政策と労働市場・社会保障改革(星野卓也) 第6章 公共部門の賃上げ・雇用増、競争政策の強化(鈴木章弘)
というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「A Goldilocks Theory of Fiscal Deficits」で、著者はAtif R. Mian(プリンストン大)、Ludwig Straub(ハーバード大)、Amir Sufi(シカゴ大)。 以下はその要旨。 This paper proposes a tractable framework to analyze fiscal space and the dynamics of government debt, with a possibly binding zero lower bound (ZLB) constraint. Without the ZLB, a greater primary deficit unambiguously raises debt. However, debt need not
という主旨のNBER論文「Fiscal Policy and Households’ Inflation Expectations: Evidence from a Randomized Control Trial」をOlivier Coibion(テキサス大オースティン校)、Yuriy Gorodnichenko(UCバークレー)、Michael Weber(シカゴ大)のトリオが上げている(ungated版)。以下はその要旨。 Rising government debt levels around the world are raising the specter that authorities might seek to inflate away the debt. In theoretical settings where fiscal policy “dominates” mo
年々増加する豪雨被害への備えは急務だが、30年来続く緊縮主義が妨げになっている。すでに現状は「人的災害」といっても過言ではない。このままインフラ整備への消極姿勢を続ければ、国民の生命を危険にさらすことになる。今、政治に何が求められているのか。 ◇ 豪雨被害への備えは「お金」の問題がカギとなる。豪雨を原因とする自然災害を予防するためには、河川の護岸工事や地滑りなどを防ぐ治山事業が求められる。いわゆる「インフラ整備」が重要だ。インフラ整備は豪雨被害だけの対策ではない。頻発する地震や酷暑でも、国民の生命と生活を守るためには実に重要になる。 だが、日本では1990年代からの財務省による緊縮主義が続くため、インフラ整備に十分な予算をかけずにきた。 今回の豪雨被害を受けた熊本県の球磨川支流に川辺川ダムの計画があった。川辺川ダムの事業計画には関係者の利害や政府、自治体の方針などが錯綜(さくそう)し、まさ
海外と比較し日本の政府債務の負担が現時点でかなり大きいと言う誤解の一部は、政府予算において、償還費を含まない他国の国債費と、それを含む日本の国債費を単純に比較してしまう誤り、そして利払い費の金利前提を知らないことからきているようだ。 2015年度の政府予算の一般会計の歳出は96.3兆円となり、当初予算としては過去最大となった。高齢化により医療費や年金の支出が増加し、社会保障関係費は30.5兆円から31.5兆円へ増加。基礎的財政収支対象経費(行政及び政策の運営に必要な費用)の73.9兆円(予算総額対比75.7%)に対して、国債費が23.5兆円(予算総額対比24.3%)と大きい。 大きい政府債務残高の負担が日本の財政を圧迫し、予算を硬直化させているという見方がある。 日本の国債費の中には、10.1兆円の利払い費(政府の債務に対する利子の支払い)に加え、13.3兆円の債務償還費が含まれている。債
不正の有無に関わらず、政府統計は頻繁に改定されるのが常です。どんなに重要な改定でも、注目されないケースは結構あります。代表的な例が、財政健全化計画の指標となる基礎的財政収支です。プライマリーバランスとも呼ばれます。 記事にある通り、基礎的財政収支の黒字化はなお遠い訳ですが、記事中のグラフをよくみると、17年度の基礎的財政収支が、今回の試算で大幅に上方修正されています。18年度に再び下振れているのでどうでもいい、と思いがちですが、18年度は見込み値であり、17年度は実績値です。この試算、実は毎年のように実績が見込みを大幅に上回っています。しかし、政府は見込み値を毎回、大幅に低く見積もる事で、先行きの基礎的財政収支の予測経路を低めにシフトしているわけです。 これは統計の改ざんや偽装ではありません。見込み値はあくまで政府予算をベースに算出されています。予算以上の税収増や歳出削減が実現すれば、実績
<増税論をめぐっては、政府債務の将来世代負担論がしばしば主張されるが、赤字財政政策は状況によっては将来負担を減少させる場合さえあることを明らかにする> 本稿は「財政負担問題はなぜ誤解され続けるのか」(2018年12月10日付)の続編である。この前稿では、「政府債務は必ず将来世代にとっての負担となる」という一般的通念が経済学的には誤りであることは、最も幅広く読まれてきた経済学の教科書にさえ銘記されていることを確認した。にもかかわらず、そのような政府債務の将来世代負担論は、政策論議の中で現在でも公然と主張されているのである。 本稿ではさらに進んで、赤字財政政策はむしろ状況によっては将来負担を減少させる場合さえあること、そして赤字財政政策の負担と呼べるものが現実にあるとすれば、それは政府債務それ自体というよりは、それを縮小しようとして行われる不適切な緊縮政策によるものであることを明らかにする。
やっぱり日本のメディアは報じないが… 消費税増税の外堀がさらに埋められた。安倍総理は、15日の臨時閣議で、来年10月に予定している消費税率10%への引き上げに備えた対策を早急に講じるよう指示する。この臨時閣議は、首相が16日から訪欧するために開催されるもので、西日本豪雨や北海道地震の災害復旧費などを盛り込んだ平成30年度補正予算案が決定される。 消費増税の足音が近づいてきているが、前回の本コラム(「消費増税で国民に負担を強いる前に、政府がいますぐにやるべきこと こんな順番では納得できない」 https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57879)では、消費増税前に、政府保有株の売却などやるべきことがあると指摘した。 今回は、その続きの一つとして、IMF(国際通貨基金)が公表した重要なレポートを紹介しよう。先週も指摘したように、IMFは財務省出向職員が仕切ってい
「政府の借金は1090兆円近くで、国民一人当たり約860万円で危機的状況である」というマスコミや識者は多い。私が消費増税を反対し、また積極的な財政政策(もちろん金融緩和は大前提)を主張すると、「田中の言うようにすれば財政が破たんする」というトンデモな人たちを見かけて驚いてしまう。 たぶんその人たちは、最低でも2つの点を理解していないと思う。1)日本銀行や政府関係機関を含んだ広義の政府部門で考えていないこと、2) 「借金」しか見ずに政府の資産をまったく無視していることである。 財務省の出向者の意見を反映してしまい国際的な経済機関であるIMF(国際通貨基金)は日本にしばしば消費増税や財政再建を勧告する。ただし財務省の担当者の影響が及ばない、より客観的なレポートでは、面白い分析を提示することがある。10月に出た「財政モニター」は、各国の政府の財政事情を、企業の会計原則に準ずるものとしてバランスシ
日本の統合政府のバランスシート問題については、高橋洋一さんがわかりやすい展望を21世紀の初めから一貫して書かれてきた。29日付けのデビット・ワインシュタイン氏の日本経済新聞「経済教室:コロンビア大学教授デビッド・ワインシュタイン氏――財政問題、成長で解決可能、円安、近く輸出に着火」について、高橋さんからメールで送られてきた異論を拝読して、ワインシュタイン氏の論説が不十分であることを知る。以下は自分用のメモ。 ワインシュタイン論説の主に政府のバランスシートに関わる発言は以下。 資金循環統計によれば、日本の政府債務残高はグロス(総額)でみると1177兆円で、国内総生産(GDP)の約243%に相当する。だがこの数字は、問題の実態を理解するうえでは、2つの理由から適切ではない。 第一に、日本の政府部門は既発債の相当量を保有しているため、債務が二重にカウントされている。企業を評価する際には資産総額か
1955年、東京都に生まれる。東京大学理学部数学科・経済学部経済学科卒業。博士(政策研究)。1980年、大蔵省入省。理財局資金企画室長、プリンストン大学客員研究員、内閣府参事官(経済財政諮問会議特命室)、総務大臣補佐官などを歴任したあと、2006年から内閣参事官(官邸・総理補佐官補)。2008年退官。金融庁顧問。2009年政策工房を設立し会長。2010年嘉悦大学教授。主要著書に『財投改革の経済学』(東洋経済新報社)、『さらば財務省』(講談社)など。 高橋洋一の俗論を撃つ! 元財務官僚の経済学者・高橋洋一が、世にはびこるもっともらしい「俗論」の過ちをズバリ解説。 バックナンバー一覧 4月28日、財政制度等審議会財政制度分科会が開催された。そこで、同分科会の起草検討委員から、「我が国の財政に関する長期推計」が報告された(本文は財務省サイト参照)。 マスコミでは「2060年度 債務残高は8000
欧州の危機を見て、いかに、そうした事態を避けるかを考えることは、日本にとって有益である。ここで「早急に消費税を上げるしかない」と合点してしまうのは、あまりに幼稚だ。実際、緊縮財政で対応したイタリアの苦闘ぶりと、その効果の薄さを見れば、別の戦略を考えなければならない。そこで見えてくるのは、日本の財政当局が「死に至る病」に取り憑かれている実態である。 国債が売り込まれて金利が上昇し、利払いのために、大幅な歳出削減や増税に追い込まれるというのは、よくある財政破綻のシナリオだ。その後は、日銀の公債引受けによって、ハイパーインフレーションが勃発するというのがお定まりのストーリーである。資金調達に関する知識を持つ者なら、予想し得る将来において、日本がそうした事態に見舞われるとは考えないのだが、市井の人々は非常に怖がっている。 ……… そうならない理由はいくつもあるが、その一つに利子課税がある。金利が上
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21日、OECD(経済協力開発機構)対日審査報告書の発表会見で、「経済成長すると破綻するのではないか」というフロアからの質問があった。それに対して、グリアOECD事務総長は、「その質問は罠か」と冗談を交えながら、「金利が上がって財政が大変になるからといって成長を諦めるわけにはいかない。成長がすべて」と言い切った。 OECDは、先進国間の自由な意見交換・情報交換を通じて、(1)経済成長(2)貿易自由化(3)途上国支援に貢献することを目的としている(OECDの三大目的)。成長を否定できるはずない。 質問のロジックは、成長すると金利上昇によって利払いが増大して財政が破綻するというものだ。もちろん、成長すれば税収も上がる。しかし、財政破綻論者は税収より利払いが大きいと主張する。財務省内にもそうした論者がいる。 彼らは財務省の資料を根拠としている。毎年予算の参考にと、国会に提出されている「後年
今回一番良かった記事は、FTの「国債格下げも財政赤字も気にするな!日本経済をすくう「たったひとつの方法」」 著者は、Peter Tasker。全然知らない人だけど、注釈を見るとビル・エモットとの共著を出している人らしい。記事はまず次の書き出しから始まります。 1月27日、スタンダード・アンド・プアーズが日本国債の格下げをした。経済大国のあいだで国家債務危機を引き起こす、グローバルな信用危機のセカンドステージが始まろうとしている――。新任の経済財政担当大臣である与謝野馨は、そういう風に考えているようだ。 当然ながらPeter Tasker氏はこの見解に異議を唱えます。それがまたすばらしい。 日本は世界3位の経済大国であり、日本国債が暴落すれば、リーマンショックの3乗くらいの衝撃になるだろう。 しかし、このような予想図には重要な視点が抜け落ちている。ユーロ圏の周辺にある「浪費国家」とちがって、
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