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  • 死傷3割の損害は全滅なのか - 山猫文庫第3版

    「損耗率3割で全滅判定を喰らう事は軍事的には常識なのですが、世間にはあまり知られていません。」(週刊オブイェクト) 戦術用語での「全滅」は、日常用語とは異なって、一人の生き残りもいない状態を指すわけではありません。部隊としての組織的戦闘継続が不能になった状態を「全滅」と評価するからです。まあ、辻政信@ノモンハン事件の「全滅とは何事か!貴様たちが生きてるじゃないか!」という具合に、軍人さんでも日常用語の方を使うことはもちろんあります。 さて、俗に損害が3割を超えると全滅だと言うようですが、これの出典はどこなのだろうと気になっています。厳密な定義ではなく経験則的なものなのでしょうが、誰が言い出したのでしょうか。 探してみると、戦史叢書の「関東軍<1>」の681頁で気になる記述に行き当たりました。いわく日陸軍においては、短時間に部隊の30%の打撃を受けた場合には一時的に戦闘力が失われ、50%の

  • サイダー瓶をリサイクルして火炎瓶 - 山猫文庫第3版

    ノモンハン事件というと、ソ連の大戦車隊に対し、火炎瓶を手にした日兵というのが古典的なイメージだと思います。 この対戦車兵器としての火炎瓶というのは、ノモンハン事件の少し前、1936年に起きたスペイン内戦中に大々的に使用されるようになったようです。現地を取材した日人新聞記者は、国粋派のモロッコ人兵士が火炎瓶攻撃をするのを見聞きし、こんな原始的な戦法はモロッコ兵にしかできないと記しています。 日陸軍へ伝わったのも、スペイン内戦中に駐仏武官だった西浦進大尉(陸士34期)の報告によるようです。ノモンハン事件中の現場の発明だという話もありますが、戦闘序盤から使用しており、少なくとも将校クラスには事前の知識があったのでしょう。ちなみに西浦進は、戦後に防衛庁防衛研究所の初代戦史室長になる人物です。 ノモンハンでの戦闘が拡大するにつれ、また火炎瓶が有効であるとの戦訓が広まるにつれ、日陸軍は火炎瓶の

  • 戦史叢書の改訂版のこと - 山猫文庫第3版

    昨日の記事で「戦史叢書」について改訂版が出ると書いたのですが、その後に気になって防衛研究所の公開情報を確認したところ、あまり期待しすぎないほうが良いみたいです。 改訂版がでるという情報のソースとしては、2003年8月12日の読売新聞の報道があります。読売新聞によれば、戦後の安全保障なども盛り込んだ全面改訂版をCD-ROMの形で出すといい、「約10年後」(当時。つまり2013年頃)に1巻目を出したいとなっていました。 ところが、当の防衛省防衛研究所戦史部(今の「戦史叢書」を出した時には防衛庁防衛研修所戦史室だった部署)は、この読売報道よりあとの時期に、戦史叢書の改訂版や要約版の発行について、戦史部の能力・組織・時間的に多くの困難があるとしています。これは、2007年(平成19年)に戦史部主催で行われた戦争史研究国際フォーラムにおいて、加賀谷貞司戦史部長が、議長総括の中で述べているものです(注

  • 鋼棺戦史(第1部ノモンハン・第1章・後編) - 山猫文庫第3版

    1.軽騎兵の突撃(承前) 5月29日0030時、小松原第23師団長は、山県支隊の攻撃が成功してソ蒙軍はほぼ一掃されたと誤認して、ハイラルへの帰還命令を発しました。それどころではない山県支隊長は、もう1日だけ攻撃を続ける旨を報告します。 同日未明、増援の第149狙撃連隊の到着したソ連軍は、取り残されている東捜索隊に攻撃を再開します(*1)。夜間のうちに壕を掘り直して、ささやかな強化を施した東捜索隊の陣地に、自走砲と対岸の砲兵の砲弾が降り注ぎます。うち自走砲中隊が、日側の車両置場に効果的な砲撃を加えました。0600時には車両置場への着弾が相次ぎ、乗用車が発火、5日分の予備燃料を積んだトラックも炎上、貴重な92式重装甲車も含めて車両は全損してしまいました。 歩戦協同の攻撃も反復されました。特に化学戦車による火炎放射が脅威を与えたようです。接近してくるソ連軍装甲車両に対して、日兵は重装甲車が健

    private_John-Doe
    private_John-Doe 2009/12/15
    ほう。「ブイコフ上級中尉ら幹部の多くは左遷されています(*4)。」
  • ノモンハン地名リストと詳細地図 - 山猫文庫第3版

    ノモンハン事件関係の地名などをあれこれメモ。 それから、作成した戦場地図を掲載。 なお、停戦後の国境画定については別記事の地図参照。 <地形> ・ゴル:河川。ゴール。 ・ノル:湖沼。ノール。 ・~水:湖沼のうち淡水のもの。 ・~湖:湖沼のうち塩水のもの。 ・オボ:石積み。モンゴルの道祖神らしきもの。オボー。 ・スメ:廟。仏教寺院。 ・オーラ:山。「~オリーン・オボ」は「~山オボ」。 ・ウンドルルク:丘。 <一般地名> ・ノモンハン:ノモンハン・ブルド・オボ。ノムハン。ソ連側主張国境要点。 ・将軍廟:日側前線司令部所在。ジャンジン・スメ。(ソ連側一部地図ではヨシマル付近に誤記) ・デブデン・スメ:ソ連側地図では満州領内ドロト湖北方12km付近だが詳細不明。しばしば将軍廟と混同。 ・ハロンアルシャン:阿爾山。温泉。日側鉄道端末の一。ハンダガイ南東。 ・ハイラル:海拉爾。日側鉄道端末の一。

  • ノモンハン事件後の国境線 - 山猫文庫第3版

    ノモンハン事件後の外交交渉では国境線画定の交渉が行われました。 チタやハルピンでの会談の後、モスクワでの1940年6月の会談で一応の協定に達しています。範囲はボイル湖以東、アルシャンに至るまでのハルハ河流域です。ソ連側はアルシャン地区を対象とすることには難色を示したようですが、現に戦闘が行われた地域だとの日側主張が通っています。 ただ、現地作業段階で、地図上にはあったオボが現存しなかったなどの問題から一時中断。最終協定は1940年8月15日、現地作業完了は同年10月15日にずれ込んでいます。 画定後の国境についてあまり良い地図が無いようなので、かなり適当ですが作図してみました。戦史叢書「関東軍(1)対ソ戦備・ノモンハン事件」収録の地図を基礎としています。なお、戦場の詳細地図は別記事参照。 ソ連・モンゴル側主張線は、戦史叢書において、日側が鹵獲した地図によるとされているものを基としてい

    private_John-Doe
    private_John-Doe 2009/11/23
    戦史叢書「関東軍(1)対ソ戦備・ノモンハン事件」収録の地図を基礎
  • 山猫文庫第3版

    このブログは、山男爵がつづるものです。 書評(軍事・SF・その他)と日々の記録のほか、歴史や軍事、水産資源など興味を持ったことについての記事を書き、以下のような連載読み物も公開しています。モットーは「鳥無き里の蝙蝠」。 「スペイン内戦と海軍」(編29回+参考文献+年表) 大戦前夜に無敵艦隊の末裔と欧州列強海軍が描いた、航跡図の切れ端。 「リーフ共和国興亡」(全14回) 1920年代スペイン領モロッコで繰り広げられた独立闘争「リーフ戦争」。 アルセマス上陸作戦は、米海兵隊も参考にした両用作戦である。 「帝国の守護者」(編11回+外伝3回) 落日のポルトガル海上帝国を護った砲艦列伝。 外伝はポルトガル領東ティモールに関わったオランダ海防戦艦について。 「回転翼の海鳥たち」(全20回) 回転翼機が甲板上に地位を占めるまでの、意外に知られざる進化史。 「ノモンハン捕虜の運命」(序+編9回)

    private_John-Doe
    private_John-Doe 2009/11/18
    スペイン内戦、ノモンハン事件
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