ベルリン自由大学教授 イルメラ・日地谷=キルシュネライト かって鉄のカーテン内に存在したドイツ民主共和国、いわゆる東ドイツ、そこにあった人口3万ほどの小さな町を想像してみてください。首都ベルリンから南へ300キロも離れたテューリンゲン地方の山岳地帯にあり、世界の情勢や物品の流れなどからは隔てられた、締め付けや統制が厳しかった社会主義国の小さな田舎町。そんな場所に日本料理の店を開こうというのは、その当時、かなり奇抜なアイディアだった筈です。しかしこの計画は、1970年、本当に実現されたのです。それは、この町に住むロルフ・アンシュッツという人物の、創意あふれるひたむきな努力の賜物でした。一体彼がどこからそんなアイディアを得たのか、今となっては知ることができませんが、これはまるで奇跡のような話です。 映画のタイトルは「スシ イン ズール」。その地方で生まれ育ったアンシュッツ氏は、もちろんそれま