大学を中退し、京都に1人居を構えてから半年。 毎日新撰組由来の地を訪れてはタバコの箱を置く日々も、金銭的な理由から終わりを迎えようとしている。 こだわりのピースインフィニティ。ガツンとクる芳香が自分で吸うには強すぎるのが、歴戦の志士たちにはちょうどいいと思って壬生寺の前にそなえ続けている。 葉が落ちる直前、山が冬眠前に生き様を見せつけてくる秋口。京都の町並みを堪能しながらゆっくりと死へ近づいていた。 家賃2ヶ月滞納、所持金2万。20歳は誰にも知られずに惨めだった。 「生活」に終わりが来るなんて最初から知っていた人間なんているのだろうか。緩やかな死は確実に近づいてくるが、その気配に気づくのは自分の間合いに入られた後だ。いつも遅い。武士ならとっくに袈裟斬りに遭っている。 京都は好きだから住んでいた。京都大学に落ちた後ろめたさとコンプレックスが歪み、辛うじて「憧れ」の形になっていたのかもしれない