ブレイディ 「エンパシー」はたとえばイギリスでは何年も前から日常的に言われていて、米国のオバマ大統領とかも好んでスピーチで使っていた言葉です。日本では、「エンパシー」は「共感」と訳されることが多かったですよね。でも、多様性への理解が求められる時代の流れのなか、「共感」では解決できないもやもやした思いを抱えていたところに、自分とは異なる考えを持つ相手の立場に立って考えてみる、〈他者の靴を履いてみる〉知的な作業としてのエンパシーという概念が、新鮮に受け止められたのだと思います。 『ぼくイエ』を読んだたくさんの方がエンパシーについてSNSで好意的に言及してくださったのですが、欧米では「エンパシー論争」も起きていて、エンパシーは危険なものにもなり得るという論者も存在したので、素朴にエンパシーがすべての万能薬だと思われるのはちょっとマズいなと思っていました。だから今回の本では反エンパシー論者たちの主