アメリカではいま、「批判的人種理論」という聞きなれない言葉が大きな論争を呼んでいる。「差別は社会構造の問題」とするこの理論に対して、保守派が総攻撃を続けており、理論を支持した教育委員会委員の罷免運動が起こるほか、理論に基づいて教員が教えないように監視カメラをつけることを呼びかける、驚いてしまうような動きもある。この理論を潰そうと、勢いづいた保守派が来年の中間選挙でこの理論潰しを大きな争点にし、選挙結果を左右するかもしない。 「批判的人種理論」とは 「批判的人種理論(critical race theory, CRT)」は固そうな名称の通り、そもそもは人種と法の関連を批判的に検証する学術的なアプローチである。1970年代半ばに黒人の弁護士で大学教授だったデリック・ベルらが唱えたとされている。現在、主な研究者として常に名前が挙がるのが、キンバリー・ウィリアムズ・クレンショー(黒人)、リチャード