わたしがしゃべると、たいていの人は戸惑ったような、困ったような、人によっては怒ったような顔になる。 わたしは長いこと、その表情の意味に気付かずにいた。 ハリネズミは月を見上げる/あさのあつこ/新潮社 内気で不器用な佐戸(のちに御蔵になる)鈴美は、小学5年生の時、クラスメートが自分のことを笑いものにしているのを偶然聞いてしまい深く傷ついたことを心の奥にしまったまま成長していった。 やがて高校生になった鈴美は、”控え目でおっとりとして、ちょっと天然が入っている女の子”というキャラで、うまくクラスメートにとけこむ術を身につけていた。しかし、仲間から外されることが恐いので、本当の自分は出していなかった。 そんなある日、通学の電車で痴漢にあってしまい、あるだけの勇気をふりしぼって、 「止めてください」と叫んだものの、逆に男に「冤罪だから訴えてやる」と脅されてしまう。 男が恐いので謝ってしまおうかと弱