司 修『戦争と美術』(岩波新書)を読む。ちょうど23年前に発行された本で、私も出版されてすぐ読んでいるはずだ。今回再読して、当時ここまで良い本だとは理解できなかったのではないかと思った。 最初にナチスに協力してその宣伝用記録映画『意思の勝利』を作り、ついでベルリンオリンピックの記録映画『オリンピア』を作った映画監督レニ・リーフェンシュタールが取り上げられる。戦後、レニは司法公聴会でナチスの信奉者だったにすぎないと判決され、裁判でも、政治宣伝活動はしなかったと無罪判決された。レニの章の最後で司はこう書く。 レニの芸術家としての美への信奉と、ナチズムとの関係は(……)、戦争画を描いた多くの画家に共通したものが見られますが、レニの場合、世界中になかった記録映画という分野をつくり出しました。日本の戦争画から生まれたものは、芸術家の奢りと、「無智な大衆」より劣る精神の貧弱さでした。そのような作品(大