この文章は、2021年に発売した短編アンソロジー『〇〇×わすれもの』に掲載されたものです。 『〇〇×わすれもの』は、一つのテーマを元に綴られたエッセイや小説などのアンソロジー同人誌です。 今回、5月3日〜5月11日の期間限定で同誌の原稿を一斉公開することになりました。 各原稿のリンクは以下の通りです。リンク: * ぼくのためのエピローグ 岩倉文也 ぼくたちの時間は無数の死に取り巻かれていて、その死は忘却であったり、変化であったりする。だから、これからここで語るのは単なる記憶でもなければ、回想でもない。ぼくは思い出すという行為によって過去を歪めたくはないし、また貶めたくもないから。 ぼくが語るのはひとつの死についてだ。もうぼくの手には届かない、それゆえ斜陽を包んでゆれる、カーテンの向こうに消えてしまったすべての影についてだ。 相沢映子。 その名を思い浮かべるたびに、ぼくの脳裏には彼女の顔より