ミュウト・2 小さな麻痺銃をこちらへ向け、男は問う。 「狙いは命か」 公表データによると五十代半ば。だが、手入れの行き届いた髪と肌、金のかかった健康体に最上級の仕立て服が決まり、四十の私より若く見える。 私は施設メンテナンスのスタッフ姿だ。冴えないのっぺりデザインの制服は使い捨てのペラペラ素材で、脅威になり得る何も隠していないことが一目でわかる作りになっている。 この場の見た目は、むしろ滑稽なぐらいだろう。せっかく人間のワーカーを排して美しくデザインされたAI制御の執務室に、私はお掃除オバさんの格好で侵入中だ。凶器どころかモップやホウキさえ持っていない。丸腰の私に、相手は護身武器を突きつける。それでも彼の方がよほど追い詰められ、緊迫している様子だった。 「お気の毒に。そんなにも命を狙われる心当たりがおありなんですね」 つい余計なことを言うと、 『ちょっとぉ? ピーペ先生ェ〜!』 イヤーカフ