能代工バスケットボール部で部長を務めていた安保敏明は、24年が経とうとしている今もあの狂騒を思い出すと鳥肌が立つと言う。 「東京体育館がすごい客の入りだったんです。最初は正面入り口から選手たちは入っていたんですが、途中から東京都の高体連の先生方のご配慮でマイクロバスを裏口に付けさせてもらえるようになって。あんな経験は後にも先にもあの時だけでした」 1998年12月。「ウインターカップ」と呼ばれる全国高校選抜大会(現在の全国高校選手権大会)での能代工は、それほど世間からマークされていた。 1967年の埼玉国体で初めて優勝してから49回の日本一を誇る、高校バスケットボール界では超がつく名門。その歴史のなかでも、エースの田臥勇太、シューターの菊地勇樹、守備の要の若月徹が1年生から主力を担ってきた98年世代の強さは圧倒的だった。 彼らが入学してからの能代工は、高校バスケットボールの主要大会であるイ