日本の城を知り尽くした城郭ライター萩原さちこさんが、各地の城をめぐり、見どころや最新情報、ときにはグルメ情報もお伝えする連載「城旅へようこそ」。今回は、2020年2月に駿府城の石垣の「故郷」を訪ねた、ひと味違う城旅です。静岡市の小瀬戸石切場に今も残る採石の痕には、先人の労苦が、まるで謎解きのように刻まれていました。 (トップ写真は下沢奥上石切場の、約40個もの矢穴が残る石) 【動画】小瀬戸石切場を訪ねて 河川と街道が通じる、駿府城石垣の採石場 <波紋のように広がる美しく希少な「輪郭式」駿府城(3)>でも触れたように、現在の駿府城は、徳川家康による幕命で諸大名が築城を請け負った「天下普請」で1607(慶長12)年から改修された。城を取り囲む石垣の石材には、築城に関わった諸大名の家紋や符丁が彫り込まれた「刻印石」が150種類300個以上も確認されている。しかし、広大な城域を埋め尽くす石垣の石材