リビングのソファのホコリを払っていましたら、お嬢さますなわちアカ子さんが、にゅーっ、と姿を現してきました。 パジャマとなんら変わりのないようなダラけた服装。 まだ半分眠っているみたいなボーッとした眼をしています。 「お嬢さま、もう10時過ぎようとしてますよ。日曜とはいえ遅起き過ぎるんじゃないでしょうか」 わたしは厳しめに、 「お顔は洗ったんですか?」 するとアカ子さんは、 「洗ったわよ」 とキッパリ。 彼女はゆるゆるとした足取りでグランドピアノに近付き、グランドピアノの前に腰掛けます。 弾き始める彼女。 わたしは、彼女の演奏をBGMにしながらソファのホコリ払いを続行するのですが、彼女の弾きかたがいつもと違うことに気が付きます。 調子が良いときの彼女なら、こんな弾きかたはしないはず。 ひとことで表すならば、「ダウナー」な音です。 違和感があるほどにダウナーな演奏。 まあ、アカ子さんが調子を上