映画や音楽など先行する表現メディアと同じように、現代のビデオゲームシーンも多様なアイデンティティを持つクリエイターとプレイヤーで構成されている。にもかかわらず、ビデオゲームにおいてはそうした現実を可視化するような言説は少ない。 一般ゲームメディアではエンターテインメントとしての情報提供が先走るのもあってか、ゲームで描かれるマイノリティのアイデンティティに言及した評論や記事が登場することはまだ多くない。現行の映画や文学批評で行なわれることが、ゲームでは決して普通ではない。 そんななか、先日出版されたゲーム評論書『フェミニスト、ゲームやってる』(晶文社)は、この一冊だけで見えにくかった状況を可視化するかのようだ。本書はタイトル通りフェミニズムの観点からさまざまなタイトルを取り上げている。それだけではなく、クィアや身体障害者など広範なマイノリティの視点で評しており、過去のゲーム評論とは一線を画し