2021.03.30 不可視の被ばく者たち アメリカ国内の核被害と「語り」の抑圧――『なぜ原爆が悪ではないのか アメリカの核意識』(岩波書店) 宮本ゆき(著者) 2021年1月22日、国連の核兵器禁止条約が発効されました。この条約は、核実験はもちろんのこと、核兵器使用の威嚇を含め禁止したもので、核により様々な被害を被った人々や環境回復への支援をも念頭においた、画期的な条約と言えましょう。 残念ながら日本、そしてアメリカも、この条約に批准していません。アメリカ国内でもこの条約を歓迎する人は少なからずいましたが、主要新聞の一面を飾ることはなく、2日前に就任式を終えたバイデン新政権の話題でもちきりでした。しかしこのことは、「核により様々な被害を被った人々や環境回復」の問題に、アメリカ国内が無縁だということを意味しません。最大で約3万もの核兵器を保持していたアメリカは、自国とその統治領域で千回以上