19世紀に刊行された少女の自伝が再評価されている。ハリエット・アン・ジェイコブズ著『ある奴隷少女に起こった出来事』。1861年に自費出版された当時は作り話と見なされ、一時は忘れ去られていた。ところが21世紀に入って米国でベストセラーに。このほど新潮文庫で刊行されて注目作に躍り出た。(篠原知存) ◇ 「200年前のアメリカにかわいそうな女の子がいました-という話じゃない。普通の女の子の話なんです。怒りとか悔しさとかにすごく共感できるし、いまの私たちが考えなきゃいけないことがたくさん詰まっている」 そう話すのは翻訳した堀越ゆきさん。本職の翻訳者でも学者でもなく、外資系コンサルティング会社で働く会社員。たまたま、原書が電子書籍で世界古典名作ランキングに入っていたのを見つけた。 「夢中になって読んで、最初に感じたのは自分の冷酷さでした。共感力も想像力もない人間だったって気づかされた。奴隷制のことは