今年デビュー25周年を迎えたL⇔R。その全アルバムがリマスタリングされ、レーベルの枠を越えて先ごろ同時リイシューされた。昨年末に、メイン・ソングライター黒沢健一の逝去が報じられ、相次ぐL⇔R関連のリリースにも感傷的な思いにとらわれるファンは少なくないだろうが、むしろそれだからこそ彼らの音楽を長く聴き続けるべきだろう。90年代に登場した“記憶すべきバンド”としてその音楽的成果を、ここでは彼らにも大いに影響を与えた洋楽の歴史的文脈と当時の同時代的潮流を踏まえながら、岡村詩野氏が詳細に解説し、その音楽的奥行きを紹介する。 文 / 岡村詩野 黒沢健一は最初からある種の裏方指向を持ったソングライターだった。 健一に最初に会ったのはファースト・フル・アルバム『Lefty in th Right』のリリースに際しての取材の場だったと思う。当時は60年代や70年代の作品が堰を切ったようにCD化されていた頃