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ブックマーク / hachiro86.hatenablog.com (8)

  • 【2214冊目】モーリス・メーテルリンク『貧者の宝』 - 自治体職員の読書ノート

    貧者の宝 作者: M.メーテルリンク,Maurice Maeterlinck,山崎剛 出版社/メーカー: 平河出版社 発売日: 1995/04 メディア: 単行 クリック: 2回 この商品を含むブログを見る 「隠れた真実が生の支配者なのだ。人々はこのことに気づきもせずに、ただ黙々と生きている奴隷にすぎない」(p.89) 『青い鳥』では、妖女ベリリウンヌの帽子についているダイヤモンドを回すと、それまで見えなかった真実の世界が目の前に現れた。だが、実際には目に見えない真実の世界など、なかなか目にすることはできない。だからほとんどの人は、現実の生活こそが唯一の世界だと思い込み、その中で生涯を送る。 だが、メーテルリンクは断言する。それは偽物の生、かりそめの世界にすぎない、と。真実の世界とは、世俗的な富や名誉の中にあるのではなく、もっと魂の奥底のほうにあるのである。そこに至るためには、言葉はいら

    【2214冊目】モーリス・メーテルリンク『貧者の宝』 - 自治体職員の読書ノート
  • 【2213冊目】D・P・ウォーカー『ルネサンスの魔術思想』 - 自治体職員の読書ノート

    ルネサンスの魔術思想―フィチーノからカンパネッラへ (ヴァールブルク・コレクション) 作者: D.P.ウォーカー,Daniel Pickering Walker,田口清一 出版社/メーカー: 平凡社 発売日: 1993/11 メディア: 単行 クリック: 1回 この商品を含むブログ (1件) を見る 「一 石、金属など――月に属する 二 植物、果物、動物――水星に属する 三 粉、蒸気、香――金星に属する 四 言葉、歌、音――太陽に属する 五 情緒、想像力――火星に属する 六 推論的理性――木星に属する 七 知的観想、神的直観――土星に属する」(p.23) マウシリオ・フィチーノ。ジョヴァンニ・ピーコ。プレトン。ラザレッリ。トリテミウス。アグリッパ。パラケルスス。ゴーリ。ポンポナッツィ。テレジオ。ドーニオ。ペルシオ。フランシス・ベイコン。そしてカンパネッラ。 この異様な「人名録」のうち、あ

    【2213冊目】D・P・ウォーカー『ルネサンスの魔術思想』 - 自治体職員の読書ノート
  • 【2179冊目】山之内靖『マックス・ヴェーバー入門』 - 自治体職員の読書ノート

    ヴェーバーはキリスト教文化が内包する合理化の普遍性を一貫して強調したのです。そして、その普遍性にこそ恐るべき運命的な力が宿っていること、ここに警告を発していたのです(山之内靖『マックス・ヴェーバー入門』)p.220 マックス・ヴェーバー入門 (岩波新書) 作者: 山之内靖 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1997/05/20 メディア: 新書 購入: 11人 クリック: 43回 この商品を含むブログ (54件) を見る タイトルに「入門」とあるが、まったくの知識ゼロから入るのはキビしい。むしろ社会学の入門書などで通り一遍のヴェーバー理解を植え付けられた人が、その「洗脳」を解くのによさそうな一冊だ。 問題は、西洋近代社会の合理性が世界を席巻したのはなぜか、ということだ。確かに西洋の合理性には普遍的な「力」がある。だが、それは決して、西洋文明がすぐれていることを意味しない。むしろヴェー

  • 【2172冊目】奥井智之『社会学の歴史』 - 自治体職員の読書ノート

    社会学の歴史 作者: 奥井智之 出版社/メーカー: 東京大学出版会 発売日: 2010/09 メディア: 単行 クリック: 16回 この商品を含むブログ (10件) を見る 社会学とは、社会に関する学問だ。では、そもそも社会とは何なのか。 社会学の創始者といわれるオーギュスト・コントは、フランス革命によって出現した市民社会を自らの学問の題材としたという。書ではその「前史」として、なんとアダムとイブの楽園追放から(さらに言えばキューブリックの『2001年宇宙の旅』の冒頭から)話を始めるのだが、それでも社会が「社会」として可視化されたのは、やはりフランス革命以降であると考えてよさそうである。 そこから著者は、マルクスとエンゲルス、フロイトという社会学に深い影響を与えた巨人を紹介し、ジンメル、デュルケーム、ウェーバー、シカゴ学派、パーソンズと、いわゆる「教科書的な」配列で主要な社会学者の学説

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  • 【2151冊目】宇野重規『保守主義とは何か』 - 自治体職員の読書ノート

    保守主義とは何か - 反フランス革命から現代日まで (中公新書) 作者: 宇野重規 出版社/メーカー: 中央公論新社 発売日: 2016/06/21 メディア: 新書 この商品を含むブログ (9件) を見る 「保守」があって「革新」がある、のではない。順序からいえば「革新」があって「保守」が生まれたのだ。 保守思想の提唱者エドマンド・バークは、フランス革命を見て保守思想を唱えた。理性に基づく進歩主義の危うさに気づき、社会の変革というものは、過去からの実践の積み重ねによって少しずつ行われるべきものだ、と訴えたのだ。 それはある意味、理性の否定であった。そして、実際にフランス革命は恐怖政治と独裁を生んだ。「理性」に基づく社会変革は、とんでもない結果に終わったのである。ただし、バークが革命の危険性を訴えたのは、それよりずっと前、革命が始まってまだ間もない頃だった。 だが、ここで一つの問題が生じ

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  • 【2146冊目】清水潔『「南京事件」を調査せよ』 - 自治体職員の読書ノート

    「南京事件」を調査せよ 作者: 清水潔 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2016/08/25 メディア: 単行 この商品を含むブログ (3件) を見る このには、2つの疑問に対する答えが書かれている。 ひとつは「南京事件とは何だったのか」。 もうひとつは「南京事件を「なかった」と主張する人がいるのは、なぜなのか」。 南京事件が厄介なのは、「何が当なのか非常にわかりにくい」点だ。真偽の疑わしい資料が膨大に存在し、それゆえに「南京事件はなかった」という主張も出てくる。「資料が疑わしい」ことと「事件自体がなかった」ことは論理的にまったく整合しないのだが、なぜかこういう論法がこのテーマではまかり通っているのである。 そこで著者が立脚するのは、ジャーナリストの基、一次資料だ。戦後に作成されたものではなく、戦争中につけられた日記、確度が高い写真、そして証言。とはいえ、77年前の事件であ

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  • 2016年のマイベスト20冊を選びました - 自治体職員の読書ノート

    2016年、この「読書ノート」に取り上げたは、151冊。その中で、もっとも印象に残った、面白かった20冊を選びました(最初はベスト10にするつもりだったのですが、選びきれず・・・)。 個人的な印象評価ですので、客観的なの良し悪しとは別物とお考え下さい。もちろん、1年間に「読んだ」が対象ですので、刊行された時期は問いません。これまで読んできたの振り返りはしてこなかったんですが、あらためて総覧してみるといろいろ見えてくるものがあって、なかなか面白かったですね~。 それでは、いってみましょうか。 第20位 hachiro86.hatenablog.com 昔ながらの宮部みゆきファンとして、しっかり楽しめました。 第19位 hachiro86.hatenablog.com 生命観から思想に至る流れが圧巻。 第18位 hachiro86.hatenablog.com イスラムを知らずして

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  • 【2131冊目】ミシェル・ウエルベック『素粒子』 - 自治体職員の読書ノート

    素粒子 (ちくま文庫) 作者: ミシェルウエルベック,Michel Houellebecq,野崎歓 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2006/01 メディア: 文庫 購入: 7人 クリック: 187回 この商品を含むブログ (97件) を見る 孤独で、孤高で、怜悧な天才的科学者ミシェル。人恋しく、セックスに生活の多くを捧げる、どこかゆがんだ内面をもった兄、ブリュノ。対照的な兄弟を描きつつ、ヒッピーやフリーセックス運動の日々を総括し、人類の未来に投げ渡すような小説。 冒頭ではミシェルが主人公であるかのように書かれているが、インパクトがあるのはむしろブリュノをめぐる描写だ。常に女性に囲まれ、官能的で刺激的に見えるが、だからといって充実した人生を送っているかといえばとてもそうは感じられない。むしろ心の中は空虚で、つねにどこかしら飢えていて、何かを求めている。人付き合いに乏しいミシェルのほ

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