論理と情緒 ちょうど一年前に読んだある文章を、 ことあるたびに思い起こしては 心の中で反芻してきた。 それは朝日新聞の『私の視点』に、 お茶の水大学教授の藤原正彦が書いた文章だ。 数学者である藤原は 『情緒力の低下が国を滅ぼす』というタイトルで 次のような論を展開する。 「かつてない情報化社会の中で最も重要なのは、 過剰な情報に溺れずに、本質を選択する能力だ。 この能力は論理的思考によって得られるのではない。 論理はどれも筋が通っているから何を選択するかに、 論理は役立たない」 「選択は情緒による。 家族愛、郷土愛、祖国愛、人類愛、卑怯を憎む心、 もののあはれ、他人の不幸への感受性、 などといった情緒が、 どれをどれほど重視するかの価値判断に働く」 藤原はこう述べた上で、結論づける。 「本質を見失い、ひとつの論理で突っ走りがちな現代、 情緒力はますます重要になっている。 情緒力を育むのに、