2008年11月、アパグループが主催する懸賞論文への応募作の内容が問題となり、田母神俊雄航空幕僚長が更迭、退官することになった騒動は記憶に新しい。航空自衛隊の現職トップが、政府見解と大きく異なる歴史観の論文を明らかにしたのが物議を醸した訳だが、その「論文」内容のお粗末さは目に余るものがあった。 田母神論文で参考文献として挙げられた『盧溝橋事件の研究』の著者で現代史家の秦郁彦は、田母神論文における自著の恣意的な引用に不快感を表明し、総論として「論文というより感想文に近いが全体として稚拙と評ざるをえない。結論はさておき、根拠となる事実関係が誤認だらけで論理性もない」と酷評し、著書『陰謀史観』でも、田母神元空幕長の歴史観を陰謀論と認定している。後に防衛大臣となる森本敏拓殖大学大学院教授も「あの程度の歴史認識では、複雑な国際環境下での国家防衛を全うできない」と批判するなど、論文の程度の低さや事実関